智山学報
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胎蔵曼荼羅の虚空蔵院における諸問題
川﨑 一洸(一洋)
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2020 年 69 巻 p. 0161-0174

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抄録

 『大日経』には、胎蔵曼荼羅の虚空蔵院を構成する菩薩として、虚空蔵、虚空無垢、虚空慧、清浄慧、行慧、安慧の六菩薩が説かれているが、「秘密漫荼羅品」と「密印品」(あるいは漢訳とチベット語訳)を比較すると、菩薩たちの幖幟の体系が異なっている。そのため『摂大儀軌』、『広大儀軌』、『玄法寺儀軌』、『青龍寺儀軌』の胎蔵四部儀軌では、その矛盾を解決すために、出現智、蓮華印、執蓮華杵の三菩薩が新たに付加されて、九菩薩となった。

 本稿では、『大日経』の本文、胎蔵四部儀軌に加えて、弘法大師請来とされる『胎蔵梵字真言』や、「胎蔵図像」、「大悲胎蔵三昧耶曼荼羅」などの図像資料も比較の対象としながら、資料間における九菩薩の印や真言の齟齬を整理し、そのデータに基づいて、日本に伝わるさまざまな胎蔵法の次第を点検して、胎蔵法の実践に資するための情報を提供する。

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2020 智山学報
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