2012 年 55 巻 5 号 p. 953-957
【目的】舟状月状骨 (SL) 靭帯損傷の分類には鏡視下に不安定性を評価したGeissler分類と, 断裂範囲を評価したWatson分類が提唱されているが, 断裂範囲と不安定性の関連性は明らかとなっていない. 今回, 橈骨遠位端骨折に合併したSL靭帯損傷の観察により両分類の関連性について検討した.
【対象•方法】橈骨遠位端骨折の鏡視下整復術の際, SL靭帯損傷を確認した65例, 65関節を対象とした. 掌背側より鏡視を行い断裂範囲と不安定性を評価した. またX線所見における舟状月状骨間距離および舟状月状骨角との関連性についても検討した.
【結果】Geissler分類のgrade Iは全てWatson分類にはない中枢部断裂であり, grade II, IIIはWatson分類のclass 1からclass 3までが混在し, grade IVは全てclass 3の完全断裂であった. X線において明らかな舟状骨の掌屈を認めたのはgrade IV, class 3の完全断裂であった.
【まとめ】Grade I, IVにおいて不安定性と断裂範囲とはよく一致したが, grade II, IIIには様々な断裂程度があることが判明した.