抄録
白坂小流域固定試験地は100年以上前にヒノキを植栽したがその後の保育を実施しなかった林分で,1976年の時点でヒノキの人工林としては不成績となり天然更新したアカマツが優占する針広混交林となっていた。その後,1980年代以降のマツ枯れ,2009~2014年のナラ枯れを経て,2022年にはヒノキが最も優占しコナラが次いで混じる林分へと大きく変化していた。一方,小径木については常緑広葉樹の本数,樹種別ではサカキ,ヒサカキ,ヤブツバキの本数が近年著しく増加していた。以上のような経緯を持ち長期の記録のある林分は希少なため,本試験地は不成績造林地の森林管理,あるいはマツ枯れおよびナラ枯れの進行中や進行後の森林管理を考える上で貴重な事例であると考えられた。