抄録
富山県利賀村の尾洞山では,山頂から北に延びる尾根上に「あがりこ」が82本分布し,その内ブナが55本,ミズナラが23本であった。あがりこの伐採回数は2回が55本で最も多く,3回以上も7本あった。あがりこは,①伐採回数が少ない初期型,②前回より高い部位で伐採された上昇型,③伐採部位が変わらない定位置型の3型に分けられた。他に二次林・人工林・自然林が分布しており,緩斜面では薪等が収穫され,急斜面では防災林として伐採が制限されてきた。当地のあがりこは,緩斜面・尾根上での雪上伐採によって形成され,その後の皆伐施業等が実施される中でも,防災林との境界や尾根までは伐採が及ばずに残ってきたものと推察された。