抄録
水辺林を利用する両生類は,水域と陸域の両方の自然環境を要求するため,生物多様性を考慮した水辺林管理の指標となる。山地源流域ではネバタゴガエルが特異的に繁殖しており,特に重要な指標種である。しかし,本種は分布が中部地方の一部に限られ,保全のために生態学的な知見が不可欠である。そこで著者らは,2023-2024年に愛知県内で成体の鳴き声モニタリング(3地域),幼体の目視センサスと環境調査(1地域)を行い,繁殖時期と繁殖場所の選好性を定量化した。その結果,本種は地下の産卵サイトが形成されやすく,水温が高い環境を選好していた。また,繁殖時期は地域間で大きく異なり,地域ごとの適切な保全の必要性が示唆された。