抄録
長野県内の山地ではニホンジカ(以下,シカ)の生息分布域の拡大に歯止めがかからず,下層植生が衰退した地域では,地表が露出し降雨時の土壌侵食が大きな問題になる。本研究は,林縁部でのシカの往来による物理的な土壌侵食の実態を明らかにした。調査地は長野県佐久市望月町にある,望月高原牧場西側の生活道路と接した林縁部とした。侵食調査は露出根を指標とした露出高や方位を複数地点で計測した。結果として,法面の最急方向近くでの根系露出が10 cm 以上を示すデータが多く,道路側溝への土砂の剥落にシカの往来が寄与している実態がわかってきた。