Colloid & Interface Communications
Online ISSN : 2758-5379
特集記事
コロイド・界面化学とバイオマテリアル
宮田 隆志新倉 謙一増田 造高井 まどか佐々木 善浩水田 涼介
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 50 巻 2 号 p. 3-13

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抄録

バイオマテリアルは生体組織や細胞との界面で相互作用し機能を発揮する材料であるため、コロイド・界面化学はバイオマテリアルの設計・開発において重要な役割を担っています。本特集では、コロイド・界面化学に基づいたバイオマテリアルの最新の研究動向を紹介します。この特集を通して読者の皆様にバイオマテリアル分野におけるコロイド・界面化学の重要性を認識していただき、今後の研究活動への新たな視点を提供することを目指します。

 

〔担当:並河 英紀(主担当)・景山 元裕・天神林瑞樹・伴野 太祐・安原 主馬(五十音順)〕

 

〔1〕医療応用を目指した刺激応答性高分子材料の設計

 関西大学 化学生命工学部 宮田 隆志

刺激応答性高分子は、温度やpHなどの外部環境変化に応答して構造や性質を変化させる。刺激応答性高分子からなる粒子やフィルム、ゲルなどはDDSやセンサー、細胞制御などの医療応用を目指して精力的に研究されている。本稿では、温度や光、生体分子によって構造変化する刺激応答性高分子の医療応用を目指した材料設計(ゲル、薄膜、微粒子、自己集合体)について、筆者らの研究を中心に概説する。

 

〔2〕クラウンエーテルとポリフェノールで作る超分子コロイド粒子と機能

 日本工業大学 環境生命化学科 新倉 謙一

新しい薬剤(ペプチド、タンパク質、核酸など)が開発されるとともに、それらを目的の細胞や組織、患部に効率よく届けるための「薬剤輸送キャリア」の重要性が増している。薬剤輸送キャリアは、製造が簡単で、生体内で分解されることが求められている。ここでは、その候補として、クラウンエーテルとポリフェノールを使って作られる新しい超分子コロイド粒子の特徴について説明する。

 

〔3〕構造制御された高分子界面におけるタンパク質との相互作用計測と機械学習を活用した解析

 東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 増田 造

 東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 高井 まどか

高分子から構成される界面は生体分子や細胞と相互作用するバイオ界面として重要な役割を担う。精密ラジカル重合により得られるポリマーブラシは、タンパク質や細胞と相互作用の構造-機能相関の解析に非常に有用である。本稿では、筆者らによる精密ラジカル重合を駆使したポリマーブラシの設計やタンパク質・細胞との相互作用解析や機械学習を利用したモデリングについて概説し、今後の展望を述べる。

 

〔4〕nanoDIP法による生体膜ハイブリッドナノ粒子の設計とバイオ応用

 京都大学大学院工学研究科 佐々木善浩・水田 涼介

生体適合性や機能性の向上を目的とした生体膜によるナノ粒子の被覆が、近年注目を集めている。本稿では、天然の細胞膜を利用したナノ粒子の界面機能とその応用について概説し、特に筆者らが開発したnanoDIP法による高機能ナノ粒子の作製技術と、DDSやバイオセンシングへの応用可能性を紹介する。

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© 2025 公益社団法人日本化学会コロイドおよび界面化学部会

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