抄録
本プロジェクトでは、メタボローム解析においてしばしば問題となる未知化合物の構造推定に、2種の独立したアプローチで取り組んだ。一方は一般的に用いられるタンデム質量分析 (MS/MS) を用いた推定であり、もう一方は代謝に基づく発表者ら独自の推定である。これにより十種程度の未知化合物の同定に成功してきたが、それには一方の手法がより良い推定を示したものも、両方の手法にて有力候補となったものも含まれていた。置換基の位置のようにMS/MSでは得にくい情報も、前駆体探索により構造推定に取り組むことができた。一方で、前駆体探索が困難な構造の化合物では、MS/MS による推定がより有力であることが考えられる。独立した2手法を用いることでそれぞれが得意な推定対象を補完しあい、また両手法の結果の組み合わせからより精度の高い推定を導くことが可能となった。