抄録
ダイオキシンやダイベンゾフランなどのダイオキシン類は急性および慢性毒性を有する化合物である。核酸塩基とダイオキシン類の相互作用について分子軌道計算で解析を行った。核酸塩基としてはアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシルのモデル分子を用い、ダイオキシン類としては、毒性等価係数の大きい2種のダイオキシンと2種のダイベンゾフランのあわせて4つの化合物を対象として計算を行った。計算方法はHF法で求めた最適化構造に対してMP2計算を行って、安定化エネルギーを求めた。その際、重なり誤差の補正を行った。核酸塩基とダイオキシンの安定な構造が得られた。核酸塩基とダイオキシン類の安定化エネルギーはワトソンクリック塩基の安定化エネルギーのおよそ半分以下であったが、核酸塩基とダイオキシンが水素結合を形成する可能性を示唆する結果が得られた。