抄録
固有反応座標(IRC)はポテンシャルエネルギー超曲面において遷移状態構造を介して2つの安定構造を結ぶ最小エネルギー経路として定義され、素反応過程に対応する反応経路として用いられている。近年、反応経路自動探索法によりIRC経路の系統探索が可能になり、グローバル反応経路ネットワークの概念が生まれたが、多次元空間における分子座標の位置関係を考慮した反応経路地図の作成は困難であった。ごく最近、我々は次元縮約法である主座標分析をネットワークの可視化に適用することで分子構造間の距離関係をできるだけ保つような反応経路地図を作成した。本研究では、IRC経路を低次元化することで得られる主座標空間に分子動力学計算から得られる古典軌道を射影することで、静的反応経路に基づき動的反応経路を議論する。