抄録
これまで機能性化学品の合成経路の開発は、経験に富んだ合成化学者の経験や勘に大きく頼ってきた。目的生成物が複雑な構造を持つ場合、多くの合成経路が考えられ、どの合成経路が効率的であるかについての判断は困難であることが多い。我々は、置換基を多数有する分子における反応に対しては、TSDBから選択された類似反応のTS構造を利用して、対象とする反応のTS構造を得る方法を提案してきた。しかしながらこの方法は、最安定なTS構造を与えないことが多い。即ち、最適化された遷移状態(TS)、反応物および生成物の安定性は、最適化に用いた初期構造に大きく依存する。そのため、この方法は、複数の合成反応の有用性や実測値と比較するには不十分なデータを与える可能性が高い。これらの目的には、反応に関係する分子の最安定配座の探索が必要とされる。本研究では、最安定配座を探索する手法を提案するとともに、1-phenylbutane-1,3-dioneと ethanimidamideのPinner Pyrimidine反応に適用した結果を示す。