抄録
【目的】関節軟骨マトリックス成分はコラーゲンとプロテオグリカン(PG)であり、PGにはコンドロイチン硫酸(CS)、ケラタン硫酸(KS)、ヒアルロン酸(HA)が結合する。今回、膝関節液中のPG、CS、KS、HA濃度を測定し年代、XP分類から検討した。【対象と方法】過去に膝関節水腫の既往がなく、外傷機転を伴わずに発症した女性の関節水腫例45例47膝を対象とした。年齢は35歳〜87歳、平均65.1歳であった。関節液は穿刺後3000回転、10分間で遠心し上清を−80℃で保管し一括測定した。【結果】関節液濃度はPG:114.7±68.8μg/ml、C4S:8.9±2.8μg/ml、C6S:34.6±18.2μg/ml、KS:9.8±5.0μg/ml、HA:1.51±0.48mg/mlであった。年齢別にみるとPG、C6S、KSは加齢とともに減少傾向を示した。腰野による変形性膝関節症X線分類からみるとgradeが進行した群においてPG、C4S、C6S、KSは減少する傾向を認め、特にPG、C6Sで顕著であった。PG、C4S、C6S、KSの各測定値間では有意な強い正の相関を認めたがHAとの間には認められなかった。【考察】加齢が軟骨マトリックス再生能の低下に関与している。関節液中の特にPG、C6S濃度は関節軟骨の状態を推測できる有用なパラメーターと考える。