中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
第105回中部日本整形外科災害外科学会
セッションID: 2-E-O-6
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O-32 脊髄腫瘍1
体動時の腹痛を主訴とした脊髄腫瘍の1例
村田 雅明大塚 哲也吉川 尚秀谷島 伸二河野 龍之助
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抄録
【はじめに】胸髄腫瘍は多彩な症状を呈し、診断に苦慮することも少なくない。今回われわれは、体動時の腹痛を主訴とし、発症から診断まで約1年半を要した胸髄腫瘍の一例を経験したので報告する。【症例供覧】症例は38歳女性で、37歳時に体動時の腹痛が出現し、近医内科・婦人科で器質的病変は認められず、ストレス性腸炎の診断で対症療法を受けていた。発症から約1年後に両足趾のしびれが出現、2ヶ月後に両下肢のしびれ・脱力のため歩行困難となり当科を受診した。初診時下肢筋力はほぼ正常、両側Th12以下の温痛覚、振動覚が低下していたが、仙髄領域は保たれていた。両側腱反射は亢進し、病的反射も陽性であった。排尿障害はなし。単純X線では異常はなく、MRIでTh10レベルに硬膜内髄外腫瘍を認めた。その後も腹痛は徐々に増強し、入院時は立位や座位は不能であった。上行性ミエログラムでTh10/11で完全ブロックを呈したが、造影剤5ml注入時に腹痛の再現が認められた。以上より体動時の腹痛はTh10レベルの硬膜内髄外腫瘍によるともの判断し手術を行った。術中所見では、腫瘍は左Th11後根由来で、病理診断は神経鞘腫であった。術後症状は速やかに消失した。【考察】本症例では疼痛領域が髄節・神経根の支配領域と一致しなかった。しかし腹圧によって症状が悪化したことより、腹腔内圧上昇により硬膜外静脈叢がうっ血し、脊柱管内圧が上昇し腫瘍が脊髄・神経根を圧迫することで腹痛を呈したものと思われた。
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© 2005 中部日本整形外科災害外科学会
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