理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 21
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理学療法基礎系
水中表面筋電図の基礎的研究
防水処理の有無による経時的変化
*神谷 晃央大田 哲生村岡 慶裕田辺 茂雄内田 成男木村 彰男
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キーワード: 水中, 表面筋電図, 測定
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抄録
【目的】
 近年水中での筋活動に関する報告はこれまでにも散見されるが、その測定方法はまだ十分に確立されているとは言い難い。水中での表面筋電図を測定する際は、水による影響を考慮する必要があり、通常防水処理を施すことが多い。しかし、防水処理は手順が煩雑でコストがかかる事や、防水効果が不十分な場合はすぐに浸水し測定環境が変化するため、臨床的研究における水中での表面筋電図の測定には問題が多い。今回、水中での表面筋電図を容易にかつ長時間測定できる方法を見出すため、経時的変化を防水処理の有無で比較検討したので報告する。
【方法】
 対象は健常男性1名で、右前脛骨筋を被検筋とした。水位は電極が完全に水没するレベルで、電極はディスポ電極(日本光電社製ビトロードG)を用い、ボディアースは水没していない肩峰とした。防水処理は電極の上から防水用ビニールフィルムテープ(3M社製)を重ね貼りした。運動負荷は自家製の機器により3kg重の一定負荷による約5秒間の前脛骨筋の等尺性収縮を用い、表面筋電波形をニューロパック8(日本光電社製)で測定・記録した。
 測定条件は防水あり・防水なしの2種類で、水中と空中との比較のため、空中で測定した後、水没後5分間隔で30分間測定した。導出された各波形の安定した2秒間のRMSを算出して比較を行った。
【結果】
 空中と水中でのRMS値は、防水ありでは変化なかったが、防水なしでは水没直後に約1/3程度へ低下した。経時的なRMS値は、防水ありでは水没直後と30分後と比較すると4/5程度へ低下した。一方、防水なしでは水没直後と30分後の比較による変化はなかった。
【考察】
 空中と水中を比べると、防水なしでは浸水により電極間インピーダンスが低下することで、電位の低下が起きていたと考えられる。一方、防水ありでは防水処理が施行されていたため変化はなかった。しかしながら防水ありの場合、経時的変化により発汗や微量の浸水が生じ、電位が低下したと考えられた。防水なしでは経時的な変化は認めず、測定誤差の範囲内であったと考えられる。水中での表面筋電図を長時間測定する場合など、防水処理を施さないことは、電位の低下はあるものの一定の条件下で測定できるため、有用であると考えられる。水中での運動療法の効果を検証するためには、水中での表面筋電図の測定方法の検討が必要である。今回の結果をもとに、動的な水中での表面筋電図の測定方法の検討へと進めていきたい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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