理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 85
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理学療法基礎系
漏斗胸手術前後における理学療法の経験
*竹内 知陽朝日 利江池上 玲一
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キーワード: 漏斗胸, Nuss法, 呼吸理学療法
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抄録

【目的】漏斗胸は胸骨及びまたは肋軟骨が背骨に向かって漏斗状に陥凹する疾患である.この疾患は,肋軟骨の過成長や横隔膜の胸骨付着部の過剰牽引,あるいは奇異呼吸の長期化によるものなどと言われているが,はっきりした原因は分かっていない.しかしながら,漏斗胸による胸部変形は,とりわけ小児期においては呼吸や心機能の成長発達に及ぼす影響が懸念され,極度の変形や呼吸循環器障害などの2次障害予防のための手術も検討される.今回,手術適応となった漏斗胸患児に対する理学療法介入の機会を得た.その経過を報告するとともに理学療法の役割について考察する.
【対象と経過】症例は6歳女児,3歳のとき喘息でかかった病院で漏斗胸を指摘された.幼稚園に入ってから陥凹が目立つようになり,平成15年7月当院外科初診,変形の程度はfunnel index3.8と中等度陥没であったが,家族の希望あり,手術治療の方針となった.9月中旬に理学療法にて術前評価を実施,また手術までの在宅運動療法として,呼吸筋・呼吸補助筋強化を目的とした体操指導及び腹式呼吸法の指導を行なった.10月初旬入院し,全身麻酔下Nuss法にて手術施行となった.術直後からICUにて呼吸介助による排痰の援助を実施,疼痛管理及び創部安静目的の2日間,低換気による無気肺の予防に努めた.3日目にベッド上起き上がりと端坐位が可能となり4日目に歩行可能となったが,レントゲン写真にて右上葉の無気肺,軽度の気胸を認めたため,体位ドレナージを中心に排痰の援助に努めた.翌日無気肺は消失し,術後7日目に予定通り退院となった.手術前及び術後6週経過時の体幹可動域,胸郭柔軟性及び呼吸筋力の変化について評価した.
【結果】体幹屈伸・側屈の可動性は術前後で変化はなかったが,回旋は左右計90度から75度へ減少した.胸郭の柔軟性は吸気時と呼気時の周径差で評価し,下部の方が術前に対し改善していた.呼吸パターンは術前胸式であったが,術後は胸腹式呼吸が上手にできるようになった.呼吸筋力はマイクロMPMを用いて最大吸気圧(PI max)及び最大呼気圧(PE max)を測定し,PI maxは術前後とも36mmH2Oと変わらなかったが,PE maxは術前53mmH2Oから術後46mmH2Oとやや減少した.
【考察】漏斗胸手術後の肺合併症として,無気肺,気胸,胸水,血胸,膿胸などがあげれらている.本症例では無気肺と気胸を認めた.術直後安静期から呼吸器合併症の予防として呼吸理学療法の介入を実施し,術後4日目まで無気肺なく離床に継げることができた.その後右上葉に無気肺を認めたが,継続的に関わる中で早期に対処でき,2次障害を最小限にとどめることができたと考えられる.術後6週時点で,呼吸筋力など充分に改善しているとは言えないが,活動的な年齢であり今後抜釘予定の術後2年まで日常生活の指導などを含め理学療法として継続的に経過をみていく必要があると考えている.

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© 2004 日本理学療法士協会
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