理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 130
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理学療法基礎系
椅子座位式背筋力測定法における筋活動の検討
*田中 潤佐々木 久登
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抄録
【目的】背筋力計は筋力の計量が簡便に出来る有用な測定器具であるが、前傾起立位で測定することから禁忌となることが多く、現在はほとんど使われていない。演者らは、第17回中国ブロック理学療法士学会において、既存の背筋力計が椅子座位で使用できる背筋力測定方法を発表し、起立位の測定結果と差異の無いことを示した。今回我々は基礎データ集積の一環として、背筋力測定中の筋収縮を筋電計によって導出し、動作筋の活動状況を検討したので報告する。
【方法】椅子座位でデジタル背筋力計が使えるように、背筋力計固定装置を試作した。実験の方法を説明し、協力の同意が得られた健常男性10名を被検者に、8チャンネル筋電計(マイオシステムMR-8)の表面電極を主要な体幹筋、下肢筋に貼り付け、椅子座位と起立位での背筋力測定時の筋活動量を筋電図積分値で算出した。筋電図の導出時に発揮させた背筋力は、被検者の体重相当及び最大努力発揮時の2種類とし、それぞれを椅子座位と立位で2回ずつ行わせた。
【結果】背筋力計による背筋力測定時の各部位の筋活動量を、筋電図から算出したパーセント積分値の平均値で比較すると、体幹筋では全ての測定条件下において僧帽筋、中部脊柱起立筋、下部脊柱起立筋の順に高い値を示した。また、大殿筋と大腿直筋は筋活動が低く、大腿二頭筋が高い値を示した。測定する度に主動作筋が変化する被検者もおり、筋活動が一定しない例もみられた。また起立位と椅子座位とでは部位別の筋活動割合に優位差はみられなかった。
【考察】今回の研究結果で、脊柱の背側筋群のうちでは僧帽筋が筋活動の割合が高いことを示した。これは背筋力計を操作する時に、把手を引っ張るという動作に強い力が必要であるからだと考えられる。背筋力は脊柱伸展に働く筋力の総合力であるから、この背筋力計が示す数値をもって背筋力と定義するには問題があるように感じた。しかし、すでに一般に定着した測定方法であるので、背筋力測定時における筋活動の状態を考慮した上で使用すれば計量データとしての意義は大きいと考える。また、椅子座位は立位より安定した姿位であることから、より一定した部位の筋肉が収縮するであろうと予測したが、両者間に差異はなく、むしろ被検者によってバラツキの多い人、少ない人に分かれた。
【まとめ】堀居 昭は、長座式背筋力測定装置を作製し、その有用性を証明している。我々は既存の背筋力計がそのまま椅子座位で使用出来る安価な固定器具を量産し、椅子座位で行う背筋力測定を臨床の場でも活用したいと考えている。今後当該測定法の安全性を立証し、高齢者や脊柱疾患患者などの背筋力測定を可能にしたい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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