理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 227
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理学療法基礎系
ラット骨格筋再生過程における成長因子ミッドカインの発現動態
*神園 朝美榊間 春利出雲 公子吉田 義弘
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キーワード: 骨格筋, 再生, ミッドカイン
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抄録
【目的】
 骨格筋は傷害されても良好に再生する組織であるが、外的環境や内的因子によって修復が妨げられることも多い。骨格筋損傷後の修復過程を調べ、修復を促進する因子や阻害因子を明らかにすることは、骨格筋損傷後の理学療法を施行する上で重要である。成長因子ミドカイン(MK)は骨格筋の発達や増殖、分化、そして色々な神経筋疾患の骨格筋の再生において重要な成長促進因子であると報告されている。今回、広範囲の筋損傷モデルを作成し、その修復過程におけるMKの発現動態を観察した。
【方法】
 8週齢のWistar系雄ラット(体重250-330 g)15匹を使用した。ネンブタール(50 mg/kg)麻酔後、右下肢をゴムバンド(幅1cm、長さ2m)で大腿から足部にかけて、らせん状に強く巻きつけて、4時間阻血と圧迫をした。阻血解除後、1、3、5、7、14日に抱水クロラールによる深麻酔で屠殺し、両下肢より腓腹筋を採取した。10%ホルマリンで一晩固定後、パラフィン包埋した。厚さ5μmの切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行った。さらに、MKと再生筋線維を観察するために家兎抗MK抗体と、抗Desmin抗体による免疫組織化学染色を行い、光学顕微鏡で観察した。腓腹筋は大きいので外側頭を使用し、反対側は対照とした。
【結果】
 阻血1日後には、広範囲に損傷が認められ、筋線維の周囲には浸潤細胞が多数観察され、拡張した血管の内腔には多くの白血球が見られた。Desmin陽性細胞はZ帯に沿って観察された。MK陽性細胞は壊死細胞の細胞質や血管壁に見られた。3日後には、1日後と比較して損傷が拡がり、筋線維内は浸潤細胞で充満し、筋線維が貪食されているように思われた。一部には筋管細胞の出現が観察された。Desmin陽性細胞は一部の筋管細胞に見られた。MK陽性細胞は、浸潤細胞や筋管細胞に観察された。5日後には、明らかな筋管細胞が観察された。DesminやMK陽性細胞は筋管細胞に強く発現していた。7日後には再生筋線維の数は増加し、中心核線維が観察された。DesminやMK陽性細胞は筋管細胞に発現していた。14日後には再生線維の細胞質はさらに増大したが、対照側と比較すると、筋線維は小さく、多くの核は中心に位置していた。Desmin陽性細胞は7日後と比較して減少していたが、MKは小さな再生線維に発現が観察された。
【考察】
 4時間の阻血、圧迫損傷により3日後より筋管細胞が観察され、5日後には明らかな再生筋線維が見られた。Desmin陽性である再生筋線維にはMKの発現が観察された。これらの結果より、MKは骨格筋損傷後の再生過程において、早期の組織修復に関与していること示唆している。今後、MKによる治癒促進効果を検討していきたい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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