理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 297
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理学療法基礎系
主観的な徒手筋力訓練と大腿四頭筋訓練器による筋力増強効果の比較検討
*森川 真也得丸 敬三谷口 千明伊藤 智典高瀬 峰文
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抄録

【はじめに】筋力強化は、理学療法上の重要な目的であり、臨床場面においては、徒手抵抗で行われることが多い。しかし、徒手筋力訓練は患者や理学療法士の主観で施行され、しかも、具体的な訓練効果に対する報告も少ない。そこで今回、この徒手筋力訓練について、どの程度の効果があるのか大腿四頭筋訓練器(以下訓練器)との効果を比較検討し、若干の知見を得たので報告する。
【対象および方法】膝関節に既往を持たない健常人の大腿四頭筋群を対象とした。MINATO社製COMBIT・CB1にて、最も筋力の発揮しやすいとされる膝関節屈曲60°での最大筋力を測定し、無作為に徒手抵抗での筋力強化群、訓練器(八神社製STSレッグエクステンション)での筋力強化群に分けた。徒手抵抗群12名(男性6名、女性6名)、年齢19~41歳(平均27.25±6.8歳)、24肢、訓練器群12名(男性6名、女性6名)、年齢19~45歳(平均28.4±7.3歳)、24肢であった。評価は最大筋力、膝蓋骨上縁から10cmの周径、CT画像からの断面積、自覚的運動強度(以下RPE)にて、それぞれ開始時(以下初期)と1ヵ月後(以下最終)に行った。最大筋力値はBMI比を採用。筋力訓練は、訓練器は最大筋力の60%にて、徒手はきついと感じる程度を目安に20RMで週三回施行。CT画像の撮影には臨床放射線技師の協力を得た。分析方法は、RPEをMann‐WhitneyのU検定、その他はt‐検定を用い危険率5%以下を有意とした。
【結果および考察】筋力では、徒手25.1±13.7%、訓練器23.2±11.1%と有意に増加を認めた。周径では、徒手1.7±2.3%、訓練器2.8±2.1%と有意に増加を認めた。CT断面積では、徒手7.1±2.0%、訓練器8.4±1.7%と有意に増加を認めた。しかし、筋力、周径、CT断面積ともに群間での有意差は認められなかった。RPEでは、徒手の初期13~18、最終12~17で有意差を認めなかったが、訓練器では初期13~17、最終10~15と低くなる傾向が見られ、有意差が認められた。
筋力増強には、最大筋力の60~90%の強度で、数回~20回の反復回数の負荷が最適と諸家の報告にあるが、我々の研究でも筋力増強効果が得られた。運度強度では、RPE15~17が最大筋力の約80%に相当、RPE15以上が最適とされている。訓練器のRPEに有意差を認めたことは、筋力の増加に伴い、1ヶ月後には60%の負荷に至っていないものと考えられた。そのため、泉らの言うように、訓練器では負荷の設定を漸進的に変更する必要があると考えられた。逆に、徒手は客観的な定量負荷が困難であるため、客観的な手段で評価を行い、常時「きつい」と感じる程度の的確な負荷が必要であると考えられた。筋力増強には週三回程度が適当と言われているが、運動頻度は5日に1回では50%に効果が下がり、2週に1回の効果はゼロといった意見もある。そのため、臨床場面では自主訓練等も含めた訓練回数の考慮も必要不可欠と考える。

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© 2004 日本理学療法士協会
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