理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 312
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理学療法基礎系
加齢に伴う上肢における体液量と握力の変化
*李 相潤柿崎 智子一戸 留美
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キーワード: 加齢, 体液量, 関連性
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抄録
【目的】
加齢に伴う筋量の消長は,体力や筋力低下などにつながり,日常生活においては大きな支障を生じうる。筋力低下との関連性が示唆されている除脂肪量は体内水分量に比例し,体内水分量は加齢に伴い減少する。体内水分量のうち,四肢の体液量の減少も例外ではなく,その量的条件の把握や維持は重要である。本研究では,加齢に伴い減少する身体組成のうち,上肢における体液量と握力について検討した。
【方法】
対象は青森県に居住する日常生活に自立し,健康な男女770名(男性257名,女性513名)であった。測定は平成13年3月より平成15年2月に青森県内の9箇所で行われた。
1.身体組成の測定には,Segmental Bioelectrical Impedance Analysis法の多周波数身体組成測定機器Body composition analyzer In Body3.0(Biospace社製)で,測定機器の電極部位および接地部位の皮膚は消毒用エタノールで拭き,完全に乾燥した後に,左右の上肢体液量を測定した。
2.握力はデジタル握力計T.K.K.5101(OG技研社製)を用い,左右交互に3回測定し,最高値を採用した。詳細な測定方法は,文部科学省の体力測定マニュアルに従った。
3.得られた結果は,SPSS 11.0J(SPSS社製)を用いて平均と標準偏差を示し,上肢の体液と握力とではピアソンの相関係数を求めた。
【結果】
1.上肢の体液量について,男性は右が2.108±2.413L,左が2.061±2.379L,女性は右が1.281±1.455L,左が1.270±1.438Lであった。男女の最高値を示したのは左右ともに30歳代で,その後は減少した。
2.握力について,男性は右が32.1±45.7kg,左が34.5±44.2kg,女性は右が20.9±27.8kg,左が19.8±26.3kgであった。男女の最高値を示したのは左右ともに40歳代で,その後は低下した。
3.有意な相関は,男性の右がr=.331より.593,左がr=.407より.662で,女性では右がr=.425より.574,左がr=.469より.644まで算出された。上肢の体液が最高値を示した男女30歳代では,男性は左のみr=.407,女性は右がr=.574,左がr=.511の有意な相関が得られた(いずれもp<.001)。
【考察及びまとめ】
上肢の体液量と握力は男女ともに,それぞれ30歳代と40歳代で最高値を示し,その後は経時的に下がる傾向を示した。また,加齢に伴う体液量と握力とでは男女ともに有意な相関が得られ,上肢の体液量と握力とでは関連が示唆された。しかし,体液量と握力とでは関連性は示唆されたものの,握力の関連因子として体液の量的条件のみでは解釈できず,神経系を含んだ総合的な解明が必要であると考えられた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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