抄録
【目的】臨床上、立位姿勢は歩行の前後で変化することをよく経験する。そのことは歩行時のなんらかの動きの要因が立位姿勢の変化を生じさせていることを意味している。歩行時の動きの変化と立位姿勢の関連性を探ることは歩行分析の着目点をより明確化できると考える。特に、骨盤の動きは歩行の中で下肢と連動し、体幹との関係を決定しているように思われる。そこで今回、骨盤と肩甲帯に着目し、歩行前後での立位姿勢の変化と歩行時の骨盤回旋を測定し、歩行との関連性を考察した。
【方法】対象は、健常成人10名(男性6名、女性4名)、年齢24.9±3.6歳である。立位姿勢は1)端座位(5分間)後の立位姿勢2)歩行(任意の歩行路10往復)後の立位姿勢を測定した。測定項目は骨盤回旋角度(左右ASISを結ぶ線が前額面となす角)、骨盤の挙上・下制(左右ASISを結ぶ線が水平面となす角)、骨盤の前後傾(S2と左ASISを結ぶ線が水平面となす角) 、肩甲帯の回旋(左右肩峰を結ぶ線が前額面となす角)、肩甲帯の挙上・下制(左右肩峰を結ぶ線が水平面となす角)である。さらに、歩行時の骨盤回旋角度を測定した。分析は、各測定項目について端座位後および歩行後の立位姿勢間で比較した。また、歩行時の骨盤回旋については、立脚側の最大後方回旋角度を左右間で比較した。なお、測定機器は3次元動作解析システムVICON370(Oxford Metrics社)により測定した。統計処理は、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準1%未満とした。
【結果】歩行前後での各々の角度の変化量の平均は、骨盤回旋0.86±0.43°、骨盤挙上0.34±0.35°、骨盤前後傾2.47±2.11°、肩甲帯回旋1.46±0.74°、肩甲帯挙上0.54±0.41°であり、すべてにおいて有意差を認めた(P<0.01)。歩行時の骨盤回旋(立脚側後方回旋)は、全被験者ともに左右の回旋角度に差があった。回旋角度の大きい側は平均8.25±2.16°、小さい側は平均3.89±2.09°であり、歩行時の骨盤回旋が大きい側と歩行後立位骨盤回旋が同様になる傾向があった(10名中7名)。
【考察】今回の実験より、同一被験者間において歩行の前後で立位姿勢が変化することがわかった。このことより、立位姿勢は常に一定ではないことがわかる。一般的に歩行時の骨盤回旋は、対側の足尖離地から立脚側の後方回旋の動きを生じる。歩行時の骨盤回旋が大きい側と歩行後立位骨盤回旋が同様になる傾向があったことにより、立脚中期以降の骨盤の動きが歩行後の立位姿勢に影響を及ぼすと考えられる。このことから、歩行後の立位を検証することにより治療結果の検証や学習効果の推測ができるのではと考え、今後臨床応用できるよう検証していきたい。今回の結果より、立位姿勢は常に一定ではなく、その前の動作や動きにより影響を受けることが示唆された。