抄録
【はじめに】回復期リハ病棟では、寝たきり予防と家庭復帰を目的にADL能力の向上を効果的に図る必要がある。このADL能力の向上に向けては従来の訓練室訓練から脱却し、病棟での実用的ADL訓練や指導の重要性が謳われている。しかし病棟でADL訓練を展開していくためには、PTだけではなくOTやST、さらには病棟看護師と協業しなければ上手に実施できないと考える。我々は、このような考えの基にOT、STと協力し、どの程度の移動レベルであれば、どのような訓練をどの場所で何単位実施するかの目安として回復期リハ病棟専用単位配分パス(以下、パス)を作成した。このパスを導入し約9ヶ月が経過したが、訓練のツールとして有効に機能している。
今回、このパスを紹介し、パス活用前後での成果を報告する。
【パスの紹介】横軸は患者の歩行や起居動作の活動レベルを、縦軸はPT、OT、STの訓練を各2単位で設定し、レベルごとに訓練内容と訓練場所を示した。PT訓練では、車椅子偏重からの脱却を図り、早期に治療用装具の作製と合わせ適切な歩行補助具の選択を行い立位、歩行でのADL訓練に導入するように設定している。歩行不可能なレベルでは訓練室での訓練が中心である。歩行自立レベルでは訓練室での体力向上訓練や自己訓練、屋外での訓練を中心としている。
【成果】パス導入により、従来の訓練室主体の訓練から脱却でき、病棟看護師との協業体制が向上しているかを判定する目的で、パス活用前後におけるセラピストの訓練実施場所の変化とセラピストと病棟看護師とのコミュニケーション頻度と形態を調査した。
訓練実施場所の調査は、パス活用前は訓練室が平均65%であった。しかし活用後は訓練室が平均36%となり病棟での係わり頻度は平均50.2%に向上した。コミュニケーション頻度と形態の調査は、1時間あたりにセラピストが看護師と会話した平均回数と会話形態を立ち話程度(1から3分程度)、4から5分程度、5分以上の3段階で調査した。会話回数は、平均22.6回から平均39.7回と増加した。会話形態は、パス活用前の立ち話し程度46.7%、4から5分程度25.9%、5分以上27.4%から立ち話し程度66.2%、4から5分23.2%、5分以上10.6%と有意に立ち話し程度の会話形態が増加した。
【考察とまとめ】パスの活用により、セラピストの訓練場所は訓練室主体から病棟や屋外など訓練室以外に変化し、併せて看護師とのコミュニケーション頻度が向上した。そして会話形態も立ち話し程度の少量頻回型の情報交換に変化していた。このようなことから本パスの活用は、訓練室以外へ訓練を定着させ看護師との協業体制構築に有効に機能していると判断された。今後も症例を通してパスの内容の見直しを行い、協業体制構築に役立てていきたい。