理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 189
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骨・関節系理学療法
サッカー経験者における下肢筋の柔軟性と既往歴の関連について
*関 清美矢澤 由佳里佐藤 成登志立石 学遠藤 剛清水 広記山本 智章
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抄録

【はじめに】当院では平成14年よりサッカー専門学校の学生に対してメディカルチェック(以下,MDC)を施行している。MDCを行う中で,下肢の筋の柔軟性に左右差のある学生が多い印象を受けた。この左右差によって障害発生が助長されると考えられ,また主なキック脚も左右差に影響すると推測される。そこで今回は,MDC項目の一項目である踵殿間距離(Heel Buttock Distance:以下,HBD)について,既往歴およびキック脚との関連について検討を行ったので報告する。
【対象と方法】対象は平成15年度に当院にてMDCを施行したサッカー専門学校の学生126名(男性123名,女性3名)で,平均年齢18.4±0.9歳,平均競技歴8.7±2.6年である。MDCは,下肢アライメント,関節弛緩性,タイトネス,下肢周径,握力,下肢筋力の6項目からなる。またアンケートにて,既往歴の有無と種類,主なキック脚の調査を行っている。HBDは,腹臥位で膝屈曲時の踵殿間の垂直線距離を定規にて計測を行った。計測結果からHBD左右差が1cm以上を非対称群(30名),1cm未満を対称群(96名)の2群に分類し,既往歴の10項目(膝靭帯損傷,膝半月板損傷,オスグッド,膝脱臼,椎間板ヘルニア,腰椎分離症,恥骨炎,肉離れ,疲労骨折,足関節捻挫)について検討を行った。分析はMann-Whitney検定を用い,有意水準を5%とした。またキック脚とHBD左右差との関連について調査した。
【結 果】HBDの全体平均は1.5±3.3cm(右平均1.7±3.5cm,左平均1.3±3.1cm)であった。既往歴を有した者は,非対称群28名(93.3%),対称群86名(89.6%)であった。既往歴の発生比率は,非対称群において,足関節捻挫72.7%,肉離れ30.3%,膝靭帯損傷15.2%の順に割合が高かった。対称群は足関節捻74.2%,肉離れ30.1%,オスグッド17.2%の順であった。既往歴について2群間では有意差を認めなかった。キック脚との関連については,主なキック脚は右105名(83.3%),左19名(15.1%),両側2名(1.6%)であった。非対称群中,キック脚のHBDのほうが大きい者は30名中20名,支持脚のHBDのほうが大きい者は30名中10名であった。キック脚との関連は認められなかった。
【考 察】今回検討を行った結果 2群間に有意な差は認められかった。これは,障害発生の機序には単一筋の左右差だけでなく拮抗筋とのバランスや全身アライメント等の多要素が関連するためと考えられる。また,診断名のない痛みや違和感の症状をもつ者もいることが推測される。今後,MDC項目の検討を行い,筋の柔軟性の左右差と障害の関連性について明らかにしていきたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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