理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 298
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骨・関節系理学療法
下肢アライメントと大腿四頭筋筋活動の関係
内側広筋斜頭の選択的訓練に対する検討
*福村 俊之森田 剛之坂口 香織前田 哲男平島 俊弘
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抄録

【はじめに】
 膝蓋骨の外側偏位により生じる膝蓋大腿関節痛に対し,内側広筋,特に斜頭線維(以下VMO)の選択的強化が必要とされている.この訓練方法について多くの報告がされているが,標準偏差が大きく,この原因として被験者の下肢アライメントが関与している可能性が考えられた.そこで,VMOの選択的強化法と考えられている運動によるVMOおよび外側広筋(以下VL)の筋活動と,下肢アライメントとの関係を検討し,若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
 対象は健常成人男性20名(年齢20.6±1.7歳,身長172.0±5.4 cm,体重64.5±7.0 kg,平均±標準偏差)であり,研究目的を説明し,同意を得た.測定筋は非利き足のVMO・VLとした.表面筋電図を双極誘導するために,NORAXON社製筋電図計測・分析装置を用い,各運動の1秒間の整流平滑化筋電図から平均筋電値を求めた.そして,90度膝屈曲位での最大等尺性伸展時の平均筋電値を100%として正規化し,各運動におけるVLに対するVMOの活動比(以下VMO/VL比)を算出した.運動の種類は,VMOの選択的活動法として報告されている1)膝伸展位での股関節内転,2)股外旋位での下肢伸展挙上,3)膝伸展位での足関節背屈内反の自動運動および4)抵抗運動を順不同に行い,各運動間で十分な休憩を取った.また下肢アライメントの指標として,上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結ぶ線と膝蓋骨中央から膝蓋靭帯付着部中央部を結ぶ線がなす角(以下Q角)を,関節角度計を用いて1度単位で計測した.分析は個人と運動の種類を因子とした二元配置分散分析と,Q角とVMO/VL比との相関をピアソンの相関係数を用いた.いずれも有意水準を5%未満とした.
【結果】
1.VMO/VL比と個人差について
 各運動のVMO/VL比において,各運動間に有意差は認めなかった(F=1.00,p=0.40).しかし,各個人のVMO/VL比の平均値間では有意差を認めた(F=6.15,p<0.01).
2.各運動と下肢アライメントとの関係について
 対象者のQ角は12.1±3.1度であった.各運動のVMO/VL比とQ角との相関については,1)r=0.70(p<0.01),2)r=0.81(p<0.01),3)r=0.44(n.s.),4)r=0.48(p<0.05)であり,足関節背屈内反の自動運動以外の運動において,Q角と有意に正の相関関係を認めた.
【考察】
 このような結果が得られたのは,Q角が大きな対象者ほど,VMOが収縮による活動張力が発揮しやすい状態にあり,各運動によってVMOの選択的活動を高めることができたためではないかと考える.このことから,VMOの選択的訓練を行う際に,下肢アライメントの調整が必要である可能性が示唆されたものと考える.今後,女性や患者を対象とした同様の実験や,CKCでの活動について考慮する必要がある.

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© 2004 日本理学療法士協会
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