理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 314
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骨・関節系理学療法
腹筋群に関する肉眼解剖学的考察
腹横筋と内腹斜筋の中・下部線維に注目して
*樋口 善英齋藤 昭彦大久保 真人伊藤 正裕
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キーワード: 腹横筋, 内腹斜筋, 肉眼解剖
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抄録
【背景と目的】
 腹筋群が体幹の安定性に貢献することは一般に受け入れられている。近年、体幹の安定性に関わる重要な要因として、深部筋の存在が注目され、取り分け腹横筋による体幹の分節的安定性への貢献が報告されている。しかし、腹横筋は身体の深部に位置しており、体幹の安定性にどのように関与しているのかを体表面から考察することは困難である。
 昨年、我々は超音波診断装置を用いて、側腹部における外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋からなる腹筋群の三層構造を観察し、外腹斜筋や内腹斜筋の収縮から分離した腹横筋の収縮を超音波イメージ上に観察される特異的形状変化として捉えることが可能であることを報告した。本研究では剖検例において肉眼的にこれらの筋を観察し、腹部の形態や機能の特徴を考える上での手掛かりを得ることを目的とした。
【対象と方法】
 平成15年度の東京医科大学医学部解剖学実習における解剖実習用献体を観察対象とし、側腹部および下腹部の外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の三層構造を肉眼的に観察した。最初に表面の皮膚を剥離し、結合組織を除去した後、筋線維の走行を観察したのち、これらの筋群に縦切開と横切開を加え、その断面から筋の内部構造を三次元的に観察し、デジタルカメラで記録した。
【結果と考察】
 肋骨下縁と腸骨上縁間の側腹部における各筋の中部線維では、外腹斜筋・内腹斜筋の筋線維に対して腹横筋の筋線維が横断的配列をしていることが観察され、腹横筋が外・内腹斜筋とは独立して制御される可能性が確認された。しかし、鼠径靭帯および腸骨稜前2/3から起始し、下内側に走行し恥骨稜に停止する下部線維では、内腹斜筋と腹横筋の筋線維は同一方向に走行し、それらを反転すると内腹斜筋と腹横筋の筋膜・筋束に連結がみられた。さらに、腹直筋鞘においても内腹斜筋と腹横筋が密接に関係していることが観察され、内腹斜筋の一部は、腹横筋とともに作用する可能性が示唆され、同部での両筋の分離収縮は難しいものと考察された。また、臨床的には、上前腸骨棘の2cm_内下方が腹横筋の触診部位とされるが、今回の観察からは同部で腹横筋の分離的収縮を触診することはかなり困難であることが示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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