抄録
【目的】変形性膝関節症(膝OA)の症状として疼痛がX線学的進行度に並行しないことは臨床上よく経験される。21年間の疫学調査で両者の関連を縦断的に検討した。
【対象と方法】膝OAの疫学調査を新潟県松代町で1979年から2000年の21年間で7年間隔4回実施した。検診内容は整形外科医による膝痛の有無などの問診や視触診,立位膝前後X線撮影を実施した。X線の膝OA病期の評価はKellgrenの分類を参考にして5段階とした。今回はこの4回の検診をすべて受診した女性373名中、初回のgradeが0,1であった女性348名を対象とし,右膝について検討した(1回目平均年齢49.3±5.4歳)。1~4回それぞれの検診時のgrade別および年代別の疼痛の出現率(有症率)を検討した。また1-2回,2-3回,3-4回検診間それぞれの時期にgradeが0,1のまま変化がなかった群(不変群)とgrade2に変化した群(悪化群)との有症率の比較を行なった。また3回目以降においてgrade2から変化の無かった群(非進行群)とgrade2からgrade3以上へ進行した群(進行群)との有症率について検討した。
【結果】各回のgrade別の有症率はgrade0,1が21~38%,grade2が36~48%,grade3以上が61~77%であった。年代別の有症率は40~60 歳までは13~34%,60歳代は16~38%,70~75歳が33~41%,75歳以上では35%の有症率を示した。不変群と悪化群の有症率の比較では1-2回間,2-3回間では不変群26%~30%に対し悪化群では46%~48%で悪化群が有意に高かったが,3-4回間では不変群31%,悪化群35%で有意差は見られなかった。また,進行と非進行群の比較おいて2-3回間では60%に対し27%,3-4回間では70%,38%で進行群が高かった。悪化群と進行群の比較では悪化群35%に対し進行群70%で,進行群が有意に高かった。また、症状の有無による次の検診時のgrade変化をみると有症状の悪化率が高いものの推計学的には1-2回間のみ有症状14%に対し5%で有意であった。
【考察とまとめ】臨床的にOA進行度と症状が並行しないことはgrade0,1でも20%に疼痛があり,逆にgrade2以上でも40%程度無症状のものが存在する今回の結果から理解が可能である。また,grade0,1から2へと移行する時期の有症率は,3回目まで有意に高い値を示しており,OA初期の疼痛は、年代別有症率で低い値であった60歳まではgrade悪化による影響を強く受けることが考えられた。そして,症状の有無による進行の影響についての検討で若年者における症状はその後の進行に重要と考えられた。今後は炎症との関連を確認するため水腫穿刺の既往との関連等に検討を加える予定である。