理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1021
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骨・関節系理学療法
片脚着地動作における床反力と膝屈曲角度について
*吉田 奈美浦辺 幸夫
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抄録

【目的】スポーツ動作において,片脚で動作が行われる頻度は非常に高い。ジャンプ着地や方向転換では片脚で体重以上の荷重に耐える必要があるが,この際に下肢関節や骨盤の動きにより荷重を分散させて対応していると考えられる。しかしこれらの関節の動きで荷重を分散できない場合,関節に過剰な負荷が加わり靭帯損傷などを引き起こす危険因子となりうる。本研究では片脚でのドロップジャンプからの着地動作における床反力,および膝屈曲角度について測定し,解析を行った。
【対象】本研究の趣旨に同意の得られた健常大学生10名で男性5名,女性5名を対象とした。対象の平均年齢は20.6±1.2歳,身長163.1±11.3cm,体重54.8±10.3kgであった。いずれの対象も利き脚は右であった。
【方法】対象に利き脚でのスクワット動作と,40cmの高さの台上から床反力計(フォースプレート9287A,Kistler社製 )への着地動作を行ってもらった。これらの動作における床反力に同期させた膝屈曲角度を確認するために,大腿骨大転子,大腿骨外側上顆,腓骨外果に反射マーカーを貼付し,三次元動作解析装置(Vicon512,Oxford Metrics社製)を用いて動作分析を行った。片脚スクワットおよび着地動作は,上肢による代償を最小限にするために両上肢を腰部にあてて行えわせた。算出されたデータより片脚着地動作時の床反力(N)の前後分力;FX(前方;FXa・後方;FXp),側方分力;FY(内方;FYm・外方;FYl),垂直分力;FZの最大値を抽出し,体重で除した値の平均値(%BW),そして膝屈曲角度の最大値を算出した。またそれぞれをスクワット時に対する片脚着地時の床反力の変化率として算出した。これらの変化率について相関の検定を行い,危険率5%未満を有意とみなした。
【結果】床反力は%FXa61.8±9.1%,%FXp36.1±17.7%, %FYm20.6±5.8%,%FYlは15.3±7.1%,%FZは520.5±79. 1%であった。6つの項目の相関では,%FZと膝屈曲角度との間で有意な負の相関が認められた(r=-0.75,p<0.05)。また,床反力変化量においては,%FXpと%FYlとの間に正の相関が認められた(r=0.69,p<0.05)。
【考察】着地動作での荷重により,後方分力が大きい対象は外側にも大きく荷重が加わっていくことが示された。このような傾向がスポーツ外傷や障害の引き金になる可能性を有するのかを今後検討していきたい。今回は各床反力成分のピーク値のみで比較したが,経過時間を一致させて比較するなど,より実際の動きの中で生じている荷重方向の変化についてさらに研究を進めていきたい。

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© 2004 日本理学療法士協会
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