抄録
【はじめに】 高齢者の健康と生活を支援する施策の一つとして2000年4月にスタートした介護保険は3年が経過した。しかし介護保険については、介護判定や運営方法など介護に直接的に関わる事項に関心が集中している。たしかに介護支援や訪問理学療法のアプローチ方法や効果も重要であるが、理学療法関係者は障害予防や体力増進といった健康増進活動にもっと視点を置くことの大切さを強調すべきである。今回、我々は「個人の健康は,家族・地域全体が健康でなければ」という考えで、住民が主体となった健康増進作り、すなわち民・学連携によるユニークな組織でこれまでの8年間の健康活動を継続してきたので、その組織作りの経緯と住民主体の健康増進活度の意義について検討したので報告する。
【方法と結果】 対象地域は広島県内の人口6000名余り、高齢化率35%の漁業と観光の小さな町である。健康増進活動を展開する発端は、一般には行政サイドが多いが、本活動は住民が健康に関する講演依頼が契機となった。講演依頼の目的を伺うと、町内の住民全体に活力が衰退しているため講演を通して、元気になって欲しいとのことであった。そこで一度の講演から学ぶより、住民主体となった長期戦略による健康増進活動を提案し住民代表と検討会をもち実行に移した。戦略は5段階からなり、ステップ1.健康増進活動の理念の確認と組織化:老人会、婦人会、体育会など町内会の各組織で話し合いをもち、その結果「健康な触れ合いのある町」を理念の第一に掲げ、10ヵ年の「エンジョイ・ヘルスアップ大作戦in鞆」とネーミングした活動を民・学連携で実施することを双方が確認した。ステップ2.健康増進の啓発と心理行動及び体力の把握。ステップ3.経年的な体力推移の把握と在宅障害老人への訪問指導:地域全体の健康増進とするために在宅障害老人への取り組みを実施する。ステップ4.健康機器の開発と健康センターの誘致:住民主体の活動により恒久的な拠点作りを。ステップ5.大作戦の総括である。現在、ステップ4のコンパクトな転倒防止機器および転倒防止機能付きの歩行器開発を行っており、さらに栄養指導、介護予防、体力維持運動指導ができる健康センターの構想を進めている。このような活動により町内行事の活発化、個人レベルでのウオーキングやサークル参加が増大した。
【考察】 行政主導あるいは医療機関が中心となった健康増進活動は多く行われるが、住民主体となって継続した長期活動は皆無である。介護保険法の第4条には国民は自らの要介護状態となることを予防するため,常に健康の保持増進を努めるよう、謳っている。本活動が8年間にわたり民・学連携により体力、地域活動、生活スタイルに少なからず影響を及ぼし、町内の各組織間の連携や健康活動意識を高かめ、住民に認知されるまでに発展したことが重要で意義があると考える。