理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 460
会議情報

理学療法基礎系
徒手的ストレッチ時のアキレス腱伸張に関するBモードエコーでの検討
*上西 啓裕芝 寿実子山本 義男三好 雅之石田 和也峠 康大川 裕行沖田 実
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】理学療法においてストレッチは重要な手技のひとつであり、筋・腱の伸張性を維持・改善する目的でよく実施される。特に、アキレス腱のストレッチは最も広く行われている手段である。ストレッチは筋腱移行部で最もよく伸張されるといわれているが、どの程度伸張されるかをWhole bodyのヒトで検討された研究は少ない。そこで、今回我々はストレッチが筋にどのような変化を与えているのかを検証することを目的に本研究を計画した。
【対象】対象は下肢に既往のない健常男性7名とした(年齢33±8.2歳、身長177±4.7cm、体重69.1±9.7kg)。
【方法】治療台上腹臥位で足部を枕上にのせ、膝関節20゜屈曲位での下肢安楽位を基準としストレッチ前の測定を行った。GE社製10MhzBモードエコーを用い、筋腱移行部の長さ及び筋膜を除く筋部と腱部の幅を慎重に記録した。次にエコーで筋腱移行部を観察しつつ体重計を用い、足底から足関節背屈方向にMP関節を中心に体重の4分の1の負荷を加え、筋腱移行部の伸張時変化を注意深く記録した。それぞれの記録時の写真をプリントアウトし、ノギスでそれぞれの距離を計測した。
【結果】安静時、筋腱移行部の平均長は13.6±3.24mmであり、筋部と腱部の幅はそれぞれ8.90±1.28mm、 9.61±1.90であった。腱および筋部の伸張率はランドマークが無く、測定が困難であった。筋腱移行部は平均1.6±0.1倍の伸張率を示したが、筋部と腱部の幅はストレッチ時でもそれぞれ0.99±0.04、1.01±0.17倍にしかならずほとんど変化を認めなかった。
【考察】今回、健常成人に対し体重の4分の1の負荷で足関節背屈方向にストレッチを行うと安静時に比べ筋腱移行部が約1.6倍伸張されることが明らかとなった。これまでも筋腱移行部はその解剖学的特徴から張力依存性が高く、ストレッチの際によく伸張される部位といわれてきた.今回のエコーを用いたin vivoでの観察でこのことが検証できた.ただし、腱や筋部がストレッチによってどの程度伸張されるかは明らかにできず、今後はこの点についても検討を加え、ストレッチが骨格筋のどの部位の伸張に最も効果的であるかを検証していきたい。一方、筋部と腱部の幅は安静時とストレッチ時にほとんど差はなく、この結果は筋・腱の断面積がストレッチの際に変化しないことを示唆している。ただし、これらの指標は数ヶ月にわたるストレッチトレーニングで増加するともいわれており、長期効果の有用性も検証する必要がある.

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top