理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 494
会議情報

理学療法基礎系
健常若年成人における歩行環境が歩行能力に与える影響
*小林 聖美
著者情報
キーワード: 健常成人, 環境, 最大歩行
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
 私たち人間は、人混みの中、狭い路地、滑りやすい床面など様々な環境の中で歩くことを強いられている。その際環境を把握し、各個人の中で注意をし、速度調整などを行い、安全に歩く方法を選択していると考える。
 よって今回は4種類の歩行環境を設定し、各個人の歩き方がどのように変化するのかを検討した。
【方法】
-被験者-
健常若年成人7名(男性3名 女性4名)
年齢27.57±4.39歳 身長161.57±10.33cm 肩幅41.14±3.24cm
-課題-
4つの環境を設定した10m歩行路を最大速度で歩くこと
-条件-
1.普通の10m歩行路
2.8mの地点に肩幅の1.5倍の隙間がある歩行路
3.8mの地点に肩幅の2.0倍の隙間がある歩行路
4.8mから10mまでにビニールシートを敷いた歩行路
各歩行路とも3mの助走路を設定
-手順-
身体属性計測した後、被験者には最大の速度で歩行路を歩きぬけるように指示した。歩行はすべて裸足で行った。各被験者とも4条件の試行順序はランダムとし、各条件とも3回ずつ測定を行った。また測定は1検者が行った。
-測定項目-
歩行速度・歩幅・歩行率
各条件において3回づつ測定し、3回の平均値を代表値として使用した。
-統計処理-
各測定項目において、歩行条件を要因とした一元配置の分散分析を行い、危険率5%未満をもって有意とした。
【結果】
各測定値において、歩行条件による統計学的差は認められなかった。
【考察】
 今回、歩行環境を変化させることで各個人の歩行能力がもっとも反映される最大歩行においては変化がみられるのではないかという仮説のもと実験を行った。しかし実際には変化がみられなかった。
 この要因としては隙間の幅が先行文献より、健常人が体を回旋させることなく通過が可能と判断するには十分な広さだったことが考えられる。歩行前に通過可能であると判断できたため、歩行速度を減少させることなく通過が可能であったのではないかと考える。
シートに関しては7名中2名の被験者より、1回目の歩行前に「滑りそうで怖い。」との声が聞かれた。これは現在までにビニールシートを触ったことがあるという経験から得られたことであると考えるが、実際には歩行速度には変化がなかった。この理由としては、今回歩行はすべて裸足で行ったため、地面との適合が靴に比べ容易であったこと、靴という介在物を通さず、ビニールシートの感覚を足底で感じることができたことなどが考えられる。また今回は被験者が健常若年成人であったため、環境に自らを合わせるために必要な身体機能が維持されていることも要因ではないかと考える。
【おわりに】
 今後は加齢変化にも着目して、実験を行っていくことができればと考えている。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top