理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 498
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理学療法基礎系
坐位での股関節屈曲運動における骨盤・脊柱の随伴運動
―健常者の分析―
*小西 正浩関屋 昇久保 祐子宮城 健次永井 聡大野 範夫
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キーワード: 股関節, 骨盤, 脊柱
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抄録

【はじめに】坐位での股関節屈曲運動は、骨盤の随伴的な後傾運動を伴う。背臥位での股関節屈曲と骨盤後傾に一定のリズムが存在する事は示されているが、坐位での股関節屈曲運動における体幹と骨盤の役割については明らかにされていない。本研究では、胸椎部までを含めた骨盤・脊柱の随伴運動について、健常者の基礎データを得る事を目的とした。
【対象及び方法】対象は本研究の主旨を理解し同意を得た、整形外科的疾患の既往のない健常女性5名(平均年齢22.4歳±2.3)とした。骨盤・脊柱の運動計測には3次元動作解析装置VICON370(OXFORD METRICS社製)を用いた。被験者の体表上に10個のマーカー(第1胸椎棘突起(Th1)、第4胸椎棘突起(Th4)、第7胸椎棘突起(Th7)、第10胸椎棘突起(Th10)、第1腰椎棘突起(L1)、第3腰椎棘突起(L3)、第2仙椎棘突起(S2)、右上前腸骨棘(ASIS)、右大転子(TR)、右外側膝関節裂隙(K))と、床面に水平基準マーカーを貼付した。測定側は右側とした。運動課題は左足底を接地したまま、安静坐位(膝関節屈曲60°)から右股関節を最大屈曲する事であった。TR-Kを結ぶ線と水平面との角を大腿挙上角、ASIS-S2を結ぶ線と水平面との角を骨盤傾斜角とし、両者の差分を股関節屈曲角度として算出した。脊柱部については隣接するマーカー3点間の角度を用いて各レベルの角度変化を算出した。
【結果及び考察】坐位における大腿挙上最大角度は平均45.1°±7.4°、その中に含まれる骨盤後傾角度は平均17.0°±3.6°、股関節屈曲角度は平均28.1°±7.7°となった。大腿挙上運動に対する骨盤後傾運動の比は最大挙上位に至るまでほぼ直線的な関係が全被験者に認められた。我々は大腿・骨盤のみでなく、脊柱全体の動きにも着眼して分析を行った結果、全被験者において股関節屈曲初期に腰椎部(L1-L3-S2のなす角度)伸展の動きがみられた。これは股関節屈曲筋力を効率的に発揮するための身体対応の一要素であると考えられる。また全被験者において骨盤後傾、腰椎部(Th10-L1-L3 、L1-L3-S2のなす角度)屈曲の動きがみられた。胸椎部については上位胸椎部(Th1-Th4-Th7のなす角度)に伸展方向への動きが全被験者に確認され、骨盤後傾量が大きい例ほどその傾向が顕著であった。このような上位胸椎部伸展の動きについては、我々の先行研究でも類似した結果が確認されている。しかし、中間・下位胸椎には一定の傾向は認められなかった。今回の結果は股関節最大屈曲運動を評価する際、脊柱の屈曲要素だけではなく伸展要素にも着目する必要がある事を示唆している。しかし健常者でも中間・下位胸椎の動きは明確になっていないため、今後はさらに被験者数を増やし、より詳細な検討を重ねていく必要がある。

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© 2005 日本理学療法士協会
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