理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 500
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理学療法基礎系
後骨間神経麻痺の原因に関する局所解剖学的検討
―Frohseのアーケードと短橈側手根伸筋,周辺血管の形態を中心に―
*阿部 友和, 中野 隆, 林 満彦
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抄録
【目的】
理学療法士がよく遭遇する広範な放散痛・運動障害を主訴とする症例の中には,固有神経支配領域の違和感,Tinel sign及び運動障害等を呈する事から絞扼性神経障害と推測されるものが多く含まれる.絞扼性神経障害は,占拠性病変以外に,筋・神経・血管の破格,運動時の摩擦による筋の腱膜化や骨棘等が神経絞扼の原因に成り得るため,その障害部位の推定は臨床所見のみならず局所解剖学的知識が必須である.
後骨間神経麻痺は前腕における代表的な絞扼性神経障害であり,その原因と成り得る解剖学的因子として腱膜化した回外筋近位縁(いわゆる‘Frohseのアーケード’),短橈側手根伸筋(以下,ECRB),橈側反回動脈等が報告されている.しかし解剖学的因子となるECRB近位縁の形態及び橈側反回動脈の走行に関する詳細な報告は,我々が渉猟する限り存在しない.今回,Frohseのアーケード周辺の局所解剖学的観察により,興味ある知見を得たので報告する.
【方法】
愛知医科大学医学部で教育・研究に使用された遺体8体(73~96歳)の右上肢を用い,腕橈骨筋,長橈側手根伸筋(以下,ECRL),ECRBを橈骨茎状突起より3横指近位部にて切離反転し,回外筋,後骨間神経,橈骨動脈,橈側反回動脈を剖出した.
【結果】
全例で回外筋浅層近位部は腱膜化し,Frohseのアーケードを形成していた.回外筋を被覆するECRB近位縁も腱膜化し,その線維走向はFrohseのアーケードの走向に一致していた.回外筋及びECRBの近位縁橈側部は,筋膜によって強固に癒着していた.橈骨動脈の筋枝は,回外筋前面を横走し,ECRBに進入しており,筋枝の数及び分岐様式に個体差を認めた.橈側反回動脈は,Frohseのアーケードの近位で後骨間神経の下を横走した後,ECRL及びECRBへ筋枝を分岐していた.1例において橈側反回動脈本幹が2本存在し,うち1本は後骨間神経上を交叉して横走していた.また橈側反回動脈と後骨間神経の交叉部下方に橈骨輪状靭帯で被覆された橈骨頭が位置していた.後骨間神経は,回外筋出口部で2本に分枝し,一方は,橈側へ緩やかに反回し,総指伸筋,尺側手根伸筋等に進入していた.他方は長母指屈筋前面を下行していた.
【考察】
後骨間神経絞扼の原因に成り得る解剖学的因子として‘Frohseのアーケード’以外にECRB近位縁及び橈側反回動脈が報告されている.今回の観察結果では,これらを支持する解剖所見とともに,橈側反回動脈と後骨間神経の交叉部下方に橈骨頭を認めた事から,肘関節屈曲及び回旋時に橈骨頭及び橈側反回動脈が後骨間神経の絞扼因子となる可能性が示唆された.解剖学的因子としても,橈側反回動脈と後骨間神経が密接して交叉する走行の特異性も絞扼因子となる可能性が示唆された.
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© 2005 日本理学療法士協会
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