理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 636
会議情報

理学療法基礎系
履物による姿勢制御の差異について
*太田 恵
著者情報
キーワード: 姿勢制御, 片脚立位,
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】 我々が普段裸足で歩行する機会は限られている。そこで履物よる効用や弊害を把握することは治療のうえで有効と考え、今回は裸足、運動靴、サンダルそれぞれにおける片脚立位を例に挙げて、比較検討した。
【対象と方法】 対象は76歳男性。左膝関節に変形性膝関節症を呈し、前外方回旋不安定性が認められた症例。患側支持での片脚立位をビデオカメラにて撮影。裸足、運動靴またはサンダルを履いた場合の姿勢を分析および比較検討した。
【結果と考察】 本症例による運動靴での片脚立位では、支持側の足部を回内、骨盤帯を下制・後方回旋させ、肩甲帯は挙上・前方回旋。骨盤帯を支持側に移動させることで支持脚へ重心移動していた。さらに足部のわずかな回内外を繰り返すことで重心線を支持基底面内に納め、それより上部の関節の移動量は少なかった。
裸足での片脚立位では運動靴の際よりもさらに足部は回内、扁平化、骨盤は下制・後方回旋、肩甲帯は挙上・前方回旋。骨盤帯を支持側に移動させ、支持側へ大きく重心移動。さらに骨盤帯の左右のわずかな移動を繰り返すことで身体重心を制御していた。
サンダルでの片脚立位では、支持側の足部が過度に回内し、膝関節が内方偏移、骨盤帯・肩甲帯ともに挙上・前方回旋、股関節を軸に体幹を反体側へ大きく傾倒した後、逆に足部が過度に回外、膝関節が外方偏移、骨盤帯・肩甲帯ともに下制・後方回旋、体幹は支持側に大きく傾倒したものの、そのまま姿勢を保持できず、両側接地に至った。
履物によって足部の動きが異なり、それに伴い姿勢制御に差異が生じたと言える。
裸足での片脚立位では、骨盤の左右への移動により重心移動を調節していたのに対し、運動靴での片脚立位では、重心移動を足部で制御し、重心線を支持基底面内に納めていた。運動靴では踵部が覆われているため、他と比較し距骨下関節が安定する。また足底部の形状によりアーチがサポートされるため、足部によるわずかな重心移動が可能であったと考える。
さらにサンダルは運動靴とは異なり、足底部がスポンジ状で軟らかいため、足部が過度に動いてしまう。過度の回内は足部に梃子としての機能を失わせ、身体の支点が不安定になる。また過度の回外は足部の柔軟性を失わせ、足底を全面接地できず、支持性と運動性が低下する。そのため重心移動を足部で制御できないので、それをさらに上部の関節で補おうとしたと考える。本症例においては、股関節を軸に体幹を大きく傾倒させ、重心線を支持基底面に納めようとしていたが、足の過度な回外に連動し、不安定性を有する膝関節が外方に大きく偏移、そのためそのままの姿勢を保持できなかったと推測する。
【まとめ】 運動靴では足部、裸足では骨盤帯、サンダルでは体幹によって、重心を制御していた。履物によって足部の動きが異なり、それに伴い姿勢制御に差異が生じたことが示唆されたと言える。

著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top