理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1038
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理学療法基礎系
健常高齢者における安定性限界の知覚の特徴
*鎌田 理之, 松尾 善美, 井上 悟, 米田 稔彦, 篠原 英記, 阿部 和夫
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抄録
【目的】
 安定性限界(limits of stability:LOS)は、支持基底面を変えずに身体の位置、特に重心を維持できる範囲を意味する。健常人ではLOSは正確に知覚され、知覚されたLOS(Perceived LOS:PLOS)と実際に重心の維持が可能な範囲(Actual LOS:ALOS)が乖離を生じることなく動作を行なう。しかし、筋骨格や神経系の制限などからPLOSとALOSとの間に乖離が生じ、転倒リスクになると仮定されている。
 LOSの知覚はリーチ課題で最も簡便に表される。どれだけ前方にリーチ可能と知覚するかを確認することで、対象者のPLOSを測定可能である。
 ALOSについて報告は多いが、PLOSについて報告は少ない。今回健常高齢者を対象にALOSとPLOSを測定し、健常高齢者のLOSの知覚の特徴について検討した。
【方法】
 老人福祉センター利用の健常高齢者231名(男性73名、女性158名)を対象とした。ALOSの測定には、Functional Reach Test(FRT)を用いた。測定はDuncanらの報告に従い、Functional Reach(FR)をALOSの指標とした。FR測定前に、対象者に自分の拳がどれだけ前に届くかを質問し、リーチ可能と答えた長さと上肢端との距離をPLOSの指標とした。ALOSとPLOSの差をActual-Perceived Distance(APD)として算出した。
統計処理にはDr.SPSSIIを用いた。ALOSとPLOSの差を見るため対応のあるStudent‐t検定、およびwilcoxon符号付き順位検定を行った。また、男女別にAPDを従属変数、ALOS、年齢、身長を説明変数としたstepwise重回帰分析を行った。
【結果および考察】
 対象者は年齢73.3±5.8歳(60‐91歳)、身長152.8±7.9cmであった。ALOSは27.8±5.8cm、PLOSは27.3±9.2cm、 APDは0.5±7.7cmであり、ALOSとPLOSでt検定、wilcoxon符号付き順位検定とも有意な差を認めなかった。Robinovitchは、若年および中年群はAPDが5.8±13.5cmとLOSを有意に過小評価して知覚すると報告した。今回ALOSとPLOSで差を認めず、健常高齢者はLOSを余裕なく知覚すると考えられ、このことが健常高齢者の転倒リスクとなる可能性が示された。
 重回帰分析では、女性において説明変数のうち年齢のみが有意となった。健常高齢女性では、加齢によりALOSとPLOSとの乖離が大きくなり、転倒リスクが増加する可能性が示された。今後、ALOSとPLOSとの乖離が転倒に与える影響について検討を加えたい。
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© 2005 日本理学療法士協会
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