抄録
【目的】演者らは39回PT学術大会において、椅子座位式背筋力測定方法と立位での方法とが、筋電図上あまり差異の無いことを示した。本研究では、椅子座位及び立位で背筋力を発揮する際の筋収縮の量と割合を比較しながら、身体各部に及ぶ力の強さを予測し、椅子座位式背筋力測定法の安全性の確認を試みた。
【方法】計測の方法を説明し、協力の同意を得られた健常男性12名を被検者に選び、測定機器にデジタル背筋力計と8チャンネル筋電計(マイオシステムMR-8)を使用した。表面電極を体幹背部に3ヶ所、腹直筋に1ヶ所、下肢の4ヶ所にそれぞれのり付けをした。デジタル背筋力計を、50kgと最大背筋力発揮時の2ケースに分け、各々2回ずつ充分な休憩をとりながら引っ張らせた。各人2ケースの力で背筋力計を引っ張った際の、単位時間当たりの積分値を筋電計で算出し、各部位における筋活動量とした。
腰部を中心に、各部位に掛かる力の強さは運動の法則に従って作図し、負荷の大きさを予測した。
【結果】被検者の平均年齢は20.9歳で平均身長は171.0cm、平均体重は65.6kgであった。
各部位における筋活動量を椅子座位と立位とで比較すると、座位最大時の腰部脊柱起立筋が143.6±75.6μvに対して、立位では185.5±103.6μvであった。また、僧帽筋中部では座位が445.6±248.6μvに対して、立位では407.2±228.0μvであった。
最大背筋力発揮時における8ヶ所の筋活動量の総計を100%とし、それぞれの部位における筋活動量を%筋活動量で表わすと、座位の腰部脊柱起立筋が13.2±3.4%、腹直筋が3.7±3.0%となった。立位では腰部脊柱起立筋が15.1±4.9%で、腹直筋は3.4±2.7%であった。
背筋力測定中に生じる力の大きさを運動の法則に従って作図すると、立位では上半身に掛かる負荷のすべてが背筋と脊椎に及ぶが、座位での自重部分は腹筋と脊椎で支えていることが判明する。
【まとめ】Finnesonが測定した体位別の椎間板内圧の変化によると、椎間板に加わる力は座位の方が立位より高くなっている。当該測定方法をこの結果に従って理論付けるなら、座位での測定が椎間板障害者にとってより安全な方法とは言えない。しかし、起立困難者や背筋力脆弱者、高齢者などの筋力測定には有用な手段と考える。また、背筋力発揮時の腰部脊柱起立筋や腹直筋の筋収縮量の少なさは、腰部疾患患者が実生活中においてこれらの筋収縮法を習得することの重要性を示唆している。