理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 535
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教育・管理系理学療法
臨床実習前に行う実力試験の有用性
*村瀬 政信村上 忠洋柘植 英明畑迫 茂樹山中 主範杉浦 昌己
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キーワード: 臨床実習, ROC曲線, 知識
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抄録

【はじめに】学生が臨床実習を開始する前に,学内教育では実習で必要となる一定の知識を学生に獲得させることが重要である.われわれは,学内教育で獲得された知識の確認として臨床実習前に実力試験を行った.そこで,各学年で行われた定期試験の結果および臨床実習前に行った実力試験の結果から臨床実習成績不良例を判定するための感度と特異度を調査した.
【対象】対象は本校の昼間部3年生41名と夜間部4年生35名であり,平均年齢は昼間部が22.8±4.1歳,夜間部が27.6±4.4歳,性別は昼間部が男性26名,女性15名,夜間部が男性26名,女性9名であった.本校の臨床実習は夜間部が4月上旬,昼間部が5月下旬から開始され,1期,2期,3期の3期間あり,それぞれ7週間であった.
【方法】定期試験成績として,昼間部は1年と2年次,夜間部は1年から3年次の各科目の点数の平均値を算出した.実力試験成績として,昼間部は臨床実習を開始する約6週間前,夜間部は約2週間前に第38回国家試験の専門問題100問と共通問題100問を行わせた.得点は国家試験の配点基準に従い,専門問題の前半40問は1問3点,専門問題の後半60問および共通問題の100問は1問1点とし,280点満点で算出した.
 臨床実習成績として,本校の基準であるA(良好),B(普通),C(やや劣る),D(劣る)の判定を用い,1期目の成績を調査した.なお,今回の臨床実習成績でDと判定された学生はいなかった.
 統計学的処理は,臨床実習成績がCと判定される定期試験成績および実力試験成績の感度と特異度を算出し,受信者動作特性曲線(receiver operating characteristic curve;以下,ROC曲線)を用いてCと判定される定期試験成績および実力試験成績の適切なカットオフ値を求めた.
【結果】ROC曲線から臨床実習成績がCと判定される適切なカットオフ値は,昼間部において,定期試験成績が79.5点未満(感度86%,特異度82%),実力試験成績が153点未満(感度86%,特異度71%)であり,夜間部において,定期試験成績が81.7点未満(感度80%,特異度47%),実力試験成績が144点未満(感度80%,特異度77%)であった.
【考察】今回,夜間部における定期試験成績の特異度のみが低かったのは,夜間部の学生において過去に行った定期試験時に獲得した知識が長期にわたって保持されず,臨床実習時に失われている学生がいたためと考えられた.このような学生を判定するためにも臨床実習前に実力試験を行うことが有用と考える.今後,臨床実習前に実力試験を行った上で,知識の不足している学生に対して知識を獲得させていきたい.

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© 2005 日本理学療法士協会
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