理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 560
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教育・管理系理学療法
情意教育に対する評価の試み
―ストレスコーピングスキルに注目して―
*武田 要藤沢 しげ子二瓶 隆一
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抄録

【はじめに】臨床実習において学校でさほど問題にならなかった学生が中止、不可になるケースがある。そこでこのような学生の特性を探り臨床実習への対応を検討したい。今回は実習開始前の時点で情意傾向を捉える方法を試みた。
【目的】1.心理テストバッテリーで情意領域を評価することにより学生の特性を把握し、個々のストレスに対する対処傾向を捉える。2.実習において中止、不可となった学生群の特性を捉えることで、心理テストバッテリーが使用できるかどうかの可能性をみる。
【対象と方法】個人情報の守秘義務と研究の目的と方法を説明し承諾を得たN養成校専門学校のPT3、4学年生127名(男性69名、女性58名、平均年齢26.1±5.11)を対象にした。方法は評価実習、インターン実習前(平成15年10月から平成16年1月)にストレスコーピング・インベントリー(以下SCIと記す)と自我態度スケール(以下EASと記す)を実施した。その後インターン実習、評価実習終了後に中止、又は不可と評価された学生のSCIとEASの特性を問題のなかった学生群と比較した。統計方法としてクラーメルの係数Vを用い比較した。
【結果】1.実習時中止・不可になった学生群と他の学生群の比較:自己中心型は問題のあるなしにかかわらず段階点に当てはめると特性傾向が比較的低値を示した。批判性、円熟性、合理性、自然性、直感性、適応性は中止・不可になった学生群でその特性傾向が比較的低値を示した。2.クラーメル係数Vによる実習時問題のなかった学生群と中止・不可になった学生群との比較:実習にて中止・不可になった学生はクラーメルの係数Vにおいてしっかり型:χ2=9.551、合理性:χ2=9.579、自然性:χ2=9.579、直感性:χ2=11.80の値を示し、有意水準5%において『しっかり型、合理性、自然性、直感性の各項目において問題のなかった学生と中止・不可になった学生との間に差がある』となった。
【考察】中止・不可になった学生群の特性として自己コントロール型(自分の感情を表に出さない)の高い傾向がみられる。また合理性、自然性、直感性が問題のなかった学生群と比べ低く、このことは感情に流されやすい、暗く無気力、カンが鈍いといったイメージになぞられる。実習というマンツーマンの中でのストレスがかかり、見えなかった学生の情意という部分がクローズアップされるのではないだろうか。早期の段階で学生にテストを実施し、学生に性格特性をフィードバックしやすくし情意問題への対処の仕方を示唆するものとなった。

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© 2005 日本理学療法士協会
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