理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1169
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教育・管理系理学療法
Bosnia and Herzegovinaにおける国際協力活動報告
*高松 美穂田口 順子
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抄録

【はじめに】
 1995年Bosnia and Herzegovina内戦終結後の復興支援として、国際協力機構(以下、JICA)無償資金協力と技術協力によるRepublika Srpska(以下、RS)へのリハビリテーション技術の向上が掲げられた。2002年よりRSにおける Community Based Rehabilitation (以下、CBR)センター設立と理学療法機材(以下、機材)供与ならびに技術協力を実施するに当り、専門家として派遣された経緯からCBRにおける理学療法士としての活動を報告する。
【プロジェクト】
 RS(人口約150万人)の地雷被災者や障害を持った方を対象としたRS・カナダ・日本の三国協力によるCBRの構築と発展を目的とし、17ヶ所のCBRセンター設立と各センターへの機材提供がJICAにより行われた。協力事業として医療統計・データベース構築と、提供機材の活用指導が実施されていた。
【活動目的】
 カナダとの協調を図りつつ、CBRセンターを巡回しながらスタッフに対する機材の応用指導が目的であった。
【活動内容】
 15ヶ所のセンターは2003年9月から始動しており、2004年4月より全センターが運営可能であった。第一次は2003年10月より6週間、第二次は2004年3月より7週間行われ、第一次派遣時では機材の応用指導として17ヶ所のセンターを訪問し、約100名のスタッフ(医師・理学療法士・看護師)に対し、機材と治療に関する個別指導を各地のセンターで行った。第二次派遣では前述に加え、機材に関するEBMなどの情報提供とセミナーを関連職種を対象に実施した。カナダ側はCanadian International Development Agency(以下CIDA)の委託によりQueen's Universityが、RSにおけるCBR構築と教育を担当していたことから、三国の協調案件であることを念頭にRS保健省及びQueen's University関係者と協力し、相互協力と連携プレーの環境づくりに留意してきた。
【考察】
 CBRが現地に定着・発展するまでには多くの人々の参加と歳月を要するといわれる。今回は、センター設立や機材提供などを日本側が、CBRシステム構築・人材育成をCIDAが援助するという形で実施された。今後のRSにおけるCBRの発展には活動を通じた政府間協力による相互協業、異文化圏同士が援助をし合い協調しながらより良い環境を作り上げていくことの重要性を認識した。また国際的活動の中で理学療法士の地位や役割に国家間格差を感じた。今回のRSでの経験を通じ、CBRを国内外にどのように展開し寄与できるのか、またその中でどのような貢献ができるのか、理学療法士としてのあり方が今後の課題として模索される時期であろう。

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© 2005 日本理学療法士協会
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