理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-06-6
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口述演題
腰椎椎間板ヘルニア術後超早期における腹臥位での腰椎持続伸展保持の即時効果
宮城島 一史対馬 栄輝石田 和宏佐藤 栄修百町 貴彦柳橋 寧安倍 雄一郎
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抄録

【はじめに,目的】

腰椎椎間板ヘルニア(以下,LDH)ガイドラインにおいて,手術直後からの積極的なリハビリテーションを行う必要性は認められないとされている。しかし,我々はLDH術後5日目から腹臥位での持続的な腰椎伸展位保持(以下,持続伸展)を開始するという積極的理学療法が疼痛,アライメント改善に有効であると報告した(石田,2014)。入院期間が短縮している現状において,さらに早期から安全に実施できないか,即時的に症状を軽減できないかと考えた。

そこで,本研究の目的は,LDH術後さらに早期における持続伸展の即時効果を調査することである。

【方法】

対象は,2016年1~6月にLDH摘出術を実施した37例(年齢40±12歳,男性24例,女性13例)とした。ドレーンを抜去した術後2,3日目に腰痛を有する例に対し,10分間の持続伸展を実施した。除外基準は背臥位で腰痛が増強した例とした。

持続伸展前後に腰痛の程度(VAS),姿勢・動作時痛の有無を評価した。自己評価として「良好」,「不変」,「悪化」の3段階で調査し,満足度をVAS(100mmが最も良好)で聴取した。術後理学療法は術翌日から開始し,術翌日は軟性コルセットを着用下で物理療法,腹横筋強化,歩行練習,ADL指導を実施した。

統計解析は,VASの推移に関してWilcoxsonの符号付順位検定を用い,効果量(r)を算出した。有意水準は5%とした。

【結果】

除外基準に該当した5例を除いた32例を本研究の対象とした。寝返り時痛28例,起き上がり時痛18例,座位時痛16例,立ち上がり痛14例の順に多かった。

VAS(mm)は腰痛24→11と有意に改善した(p<0.05,r=0.65)。満足度は77mmと良好であった。良好例15例(46.9%),不変例17例(53.1%),悪化例はいなかった。良好例における症状消失例は5例(33%)存在した。

【結論】

術後超早期でも持続伸展による悪化例は存在せず,良好例の3割で症状が完全に消失した。術後超早期の持続伸展は,背臥位で症状が増強しない症例に対して症状改善に結びつく可能性を示唆した。

術後超早期の腰痛の原因として,創部痛,神経根性,椎間板性・筋性腰痛などが考えられる。術前は腰仙椎が直線化する(Endo K,2010),術後は腰椎前弯が減少する(Mannion,2005)との報告があり,術前からのアライメント不良が,術後も残存することが推察される。腰椎前屈位により椎間板内圧が高くなる(Nachemson A,1960),腰背筋内圧が高くなる(紺野,2000)との報告がある。術前からのアライメント不良に対して持続伸展を行うと,腰椎が伸展位になることで椎間板・腰背筋内圧が減少し,椎間板後面(後縦靭帯,線維輪)の緊張軽減による機械的刺激の減少および腰背筋の侵害受容器への刺激減少により,症状改善の要因につながった可能性が考えられる。

LDH術後超早期の持続伸展は,悪化例は存在せず,即時的な腰痛の軽減が得られることから,安全かつ有効な理学療法の可能性がある。

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© 2017 日本理学療法士協会
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