理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-07-2
会議情報

口述演題
靴底踵外側部の摩耗が健常若年者の歩行時の下肢運動に与える影響
早瀬 周平斎藤 珠生山田 千穂吉田 朱織江戸 優裕中俣 修
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

靴には足部への負担を軽減する緩衝性や,過度な動きを抑制する安定性が求められる。しかし,靴は地面との摩擦による底面の摩耗を避けることができず,摩耗により本来の機能を発揮できない状態での歩行は下肢関節のメカニカルストレスを増大させると考える。靴底の摩耗による歩行の変化を調べた先行研究は散見されるが,メカニカルストレスの指標である関節モーメントの検討は管見の限りなされていない。したがって,本研究の目的は靴底の踵外側部の摩耗による歩行中の下肢関節運動と関節モーメントの変化を明らかにすることとした。

【方法】

対象は健常者10名(年齢20.3±0.9歳・身長167.1±8.7cm・体重59.3±15.7kg)とした。

計測は三次元動作解析システムVICON-NEXUS(Vicon motion systems社)と床反力計(AMTI社)を使用した。マーカー位置および算出項目はPlug-In-Gait下肢モデルに準拠し,右下肢データを分析対象とした。計測課題は至適速度での歩行とし,靴底の踵外側部の摩耗量を変化させたスニーカーXLC-CSR(Convers社)を両側に装着して行った。摩耗条件は,齋藤ら(2006)の報告値を参考に摩耗なし(以下Normal),中等度摩耗(以下Mild),重度摩耗(以下Severe)の3段階とした。データはStance phase(以下SP)の時間で正規化した後に3試行分を平均し,歩行周期各相に相当する10・35・65・90%SPにおける値を比較した。統計学的分析は,Friedman検定とpost-hocにTukey法による多重比較検定を用い,有意水準1%で判定した。

【結果】

Normalに比べて,摩耗靴では足関節背屈(Severe:10/35%SP)・回外(Severe:10%SP),膝関節屈曲(Mild:10%SP・Severe:10/35/65%SP)・外反(Severe:10/35/65/90%SP)角度が大きく,内部膝関節外反・股関節外転モーメント(Mild:10%SP・Severe:10%SP)が小さかった。

【結論】

摩耗靴は靴底の踵外側の支持性がないため,Loading Response(以下LR)に距骨下関節(以下ST関節)が急激に回外すると考えられるが,実際にはこれを低減するためにtoe outによる歩行修正が生じたと推察される。Toe outにより,踵接地時に靴の摩耗面と床面が平行になるため,LRにST関節の急激な回外を軽減できるが,下肢が外方を向く肢位でのヒールロッカーにより下腿前内側面が前方に引き出され,膝関節が外反し膝内側を走行する筋の遠心性収縮を生じさせたと考える。

靴底の摩耗によりおこるtoe out戦略はLRの外側不安定性を低減する代償に,膝関節外反によるメカニカルストレスを生じさせることが分かった。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top