理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-07-6
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口述演題
大腿四頭筋セッティングにおける膝蓋上嚢周囲脂肪体の画像評価
核磁気共鳴画像法(MRI)による矢状断の観察
真辺 樹里橋元 彩弥横山 雄輔田中 紳太郎湯ノ口 悠士高田 和真横山 尚宏長津 秀文信太 圭一川元 大輔
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抄録

【はじめに】

膝蓋骨上脂肪体(suprapatellar fat pad:以下SPF)と大腿骨前脂肪体(prefemoral fat pad:以下PFP)は,矢状面にて膝蓋上嚢の前後に存在する脂肪体である。その機能は比較的類似し,膝伸展化機構の効率を高め,膝蓋上嚢の滑走性を維持すると報告されているが,SPF・PFP・膝蓋上嚢の機能性を画像所見より探究している報告は散見されない。本研究ではSPF・PFPが膝蓋上嚢を囲う構造を膝蓋上嚢周囲脂肪体(perisuprapatellar pouch fat pad:以下PSPF)と定義し,核磁気共鳴画像法(以下MRI)を用い安静時と大腿四頭筋セッティング時で形態を比較,同時にPSPFの形態に影響する因子を検証する。

【対象と方法】

可動域制限を呈さない男性8名(16肢),平均年齢19.1±0.7歳。PSPFの実態は,日立MRイメージング装置(Apetroシリーズ)を用いMRIを施工。膝関節MRIの矢状断,T2強調画像を用い調査した。撮影肢位は仰臥位,股関節軽度内旋位,膝関節伸展位にて同部位を固定,安静時と大腿四頭筋セッティング時を撮影した。撮影条件は冠状面・水平面にて,膝関節面より顆間窩中央に垂直になるよう位置を決め,矢状断10mm間隔に3スライス撮影し2枚目を画像解析した。PSPFの計測点はSPF最上端とし,大腿骨前面に垂直になるよう厚みを①全厚,②皮下脂肪厚,③PSPF厚,④筋厚(①-(②+③))を計測。次に⑤顆間部最下点を通る水平線から垂直にPSPF計測点の距離,⑥膝蓋骨移動距離(膝蓋腱長),⑦膝蓋骨上縁を通る大腿骨側に引いた水平線から大腿四頭筋角度を計測した。上記7項目を(安静時/大腿四頭筋セッティング時)で比較,統計処理にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。また,有意差のある項目の関係性をPearsonの相関係数を用いて検証した(有意水準5%未満)。

【結果】

7項目の結果を記す。①(34.1mm/36.7mm),②(12.2mm/12.0mm),③(10.1mm/13.3mm),④(11.8mm/11.3mm),⑤(81.7mm/87.2mm),⑥(39.5mm/43.0mm),⑦(61.7度/74.3度)。②と④以外全ての項目で大腿四頭筋セッティング時の値が有意に高かった(p<0.01)。有意差のあった5項目のうち,①全厚および⑥膝蓋骨移動距離(膝蓋腱長)と③PSPF厚との間に有意な相関を認めた(それぞれ,r=0.603,r=0.539,p<0.05)。

【結論】

PSPF厚の増加は,厚みの他項目と照らし膝蓋上囊の厚み・脂肪体の柔軟性が増加したと判断した。膝蓋上囊の癒着を画像診断する際に関節造影を用いるが,MRIと大腿四頭筋セッティングを用いたPSPFの厚みを利用する手段は簡易で有効性が期待できる。また,大腿四頭筋角度増加は筋張力との関連性と捉えMRIの有効性が示された。PSPF計測点の上方移動は,膝蓋上囊に停止する膝関節筋の牽引を考えるが,安岡は停止部にいくほど脂肪組織に覆われているとし,MRIでの同定は困難と判断した。PSPF厚と全厚,膝蓋骨移動距離の相関性から従来のpatellar mobilization・大腿四頭筋セッティングは膝蓋上囊癒着予防の効果を裏付ける結果となった。

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© 2017 日本理学療法士協会
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