理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-09-3
会議情報

口述演題
両側性変形性膝関節症患者の遊脚期膝最大屈曲角度減少に伴う下肢の代償動作
清水 俊行原 良昭大門 守雄菅 美由紀西尾 祥子松本 恵実河合 秀彦北川 篤三浦 靖史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

両側性変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の歩行は,遊脚期膝最大屈曲角度が減少しているが,膝関節以外も含めた遊脚期の運動学的な報告は少ない。そこで本研究では,遊脚期の膝最大屈曲角度の減少に伴う股関節の代償的なクリアランスを検討し,両側性膝OA患者の歩行の特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】

対象は両側性膝OAと診断された女性13例26肢(全例内側型,年齢73.5±4.2歳)である。被検者の各足は,膝関節屈伸可動域(以下,ROM)を左右で比較し,ROM制限が大きい側をSevere側(以下,S側),反対側をModerate側(以下,M側)とした。

動作課題は約8mの直線歩行路での独歩快適歩行とした。測定は被検者の身体14箇所に赤外線反射マーカーを貼付し,赤外線カメラ7台を用いた三次元動作解析装置(MAC3D system)を使用した。歩幅と遊脚時間,両股屈伸・外転角度,両膝屈曲角度と角速度は赤外線反射マーカーより算出した。

評価項目は①歩幅,②遊脚時間,③前遊脚期(以下,PSw)膝屈曲角度,④PSw股伸展角度,⑤PSwから遊脚中期(以下,MSw)の膝屈曲角速度,⑥PSwからMSwの股屈曲角速度,⑦PSwからMSwの股最小外転角度,⑧MSw膝最大屈曲角度,⑨MSw股屈曲角度,⑩MSwから遊脚終期股最大屈曲までの股屈曲角速度の10項目である。統計学的方法として,S側とM側の評価項目を対応のあるt検定で比較した。有意水準は5%未満とし,解析にはR version 3.2.1を使用した。

【結果】

膝ROMはS側(伸展-12.3±6.0°,屈曲125.4±6.6°)がM側(伸展-6.2±5.5°,屈曲133.5±5.2°)より有意に低値であったが(p<0.01),歩行中の歩幅と遊脚時間には有意差はみられなかった。しかし,③PSw膝屈曲角度はS側がM側よりも有意に低値であり(S側27.5±10.9°,M側33.6±6.5°,p<0.001),④股伸展角度はS側が有意に高値であった(S側12.8±9.3°,M側9.4±7.9°,p<0.001)。⑤PSwからMSwの膝屈曲角速度(S側149.0±68.0rad/s,M側192.1±31.0 rad/s)と⑥股屈曲角速度(S側129.1±48.6 rad/s,M側156.0±28.0 rad/s)はS側が有意に低値であったが(p<0.01),⑦股最小外転角度はS側が有意に高値であった(S側3.0±2.6°,M側1.6±1.6°,p<0.05)。⑧MSw膝最大屈曲角度(S側46.3±14.1°,M側58.0±6.8°)と⑨股屈曲角度(S側4.0±10.6°,M側10.6±7.0°)はS側が有意に低値であったが(p<0.01),⑩MSw以降の股屈曲角速度はS側が有意に高値であった(S側80.7±27.1rad/s,M側63.7±13.5 rad/s,p<0.001)。

【結論】

左右の膝ROMに相違のある両側性膝OA患者の歩行は,S側においてPSwに股伸展位での膝屈曲角度が減少し,さらにMSwに向けて股・膝屈曲が行い難く,代って股外転角度を増大させてクリアランスを行い,MSwに軽度股屈曲位での膝最大屈曲角度が減少していた。それ以降は股屈曲を努力的に行い,歩幅や遊脚時間が同程度になるよう調整していることが示唆された。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top