理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-10-3
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口述演題
変形性膝関節症における手術適応例と手術回避例の患者特性の検討
富田 樹弦巻 徹皆川 陽美藤澤 汐里齋藤 昭彦天本 藤緒
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抄録

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(以下,膝OA)のうち,約1割は手術療法を行なっている。OARSIのガイドラインでは,非薬物療法と薬物療法の併用によって十分な疼痛緩和と機能改善が得られない膝OAの場合は手術を考慮するとされている。手術適応には明確な定義がある訳ではなく,手術適応に関する研究は少ない。また,保存療法を選択している膝OA患者には手術療法を選択するべきか悩んでいる場面に臨床上遭遇することが多い。

手術適応となった例と手術回避となった例の患者特性を知ることで,保存療法希望患者への適切な説明や指導が可能となると考えられる。

そこで,自由が丘整形外科を受診した膝OA患者の中で,手術を回避できた例,手術適応にて他院紹介となった例の患者特性の検討を行った。

【方法】

2014年1月から2016年8月までの間に当院にて,膝OAまたは骨壊死の診断がつき,医師より手術(人工関節置換術または高位脛骨骨切り術)目的で他院へ紹介した88人122膝(男:女=17:61,年齢67.51±9.83歳,身長1.58±0.08m,体重61.51±12.24kg,BMI24.21±4.43)を手術適応群,当院にて保存療法を実施し手術を回避できている人のうち,無作為に148人202膝(男:女=23:125,年齢63.97±10.24歳,身長1.58±0.08m,体重56.84±9.59kg,BMI22.83±3.05)を抽出し手術回避群とした。自己免疫疾患を合併している症例は除外した。解析項目として年齢,身長,体重,BMI,YAM,内科的疾患のうち糖尿病,高脂血症,高血圧の有無を抽出し検討した。

保存療法(ステロイド注射,リハビリ期間3ヶ月以上)を継続したが,手術適応となった群25人36膝(男:女=4:24,年齢67.92±9.51歳,身長1.59±0.09m,体重64.31±12.49kg,BMI25.44±3.37)と手術回避群45人49膝(男:女=3:42,年齢65,84±9.08歳,身長1.55±0.07m,体重55.28±9.8kg,BMI22.82±3.1)で上記項目に加え,レントゲン上よりkellgren-lawrenceの分類(以下KL分類),大腿脛骨角,MRI上より骨髄浮腫,骨壊死,ACL損傷の有無を抽出し検討した。

統計学的処理はそれぞれ対応のないt検定,χ2検定を使用し,有意水準は5%とした。

【結果】

年齢,体重,BMIは手術適応群が有意に高値を示し,YAMは有意に低値を示した(p<0.05)。一方で,内科的疾患には有意差が認められなかった。

保存療法を継続したが手術適応になった群では,体重,BMI,大腿脛骨角が有意に高値を示した(p<0.05)。保存療法を継続したが手術になる因子として,高脂血症の有無,ACL損傷の有無,骨髄浮腫の有無,KL分類に有意な関連があることが示唆された(p<0.05)。

【結論】

本研究において,膝関節が構造的に破綻している場合は,保存療法の効果が見込みにくいといえることが示唆された。しかし,構造的問題以外において,手術回避群では高脂血症や体重過多が有意に少ないことが特徴として挙げられる。このことから,運動指導や食事指導,生活指導を行なうことで体重コントロールや生活習慣の改善が見られた場合,手術回避が可能となる可能性が示唆された。

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© 2017 日本理学療法士協会
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