理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-11-2
会議情報

口述演題
鏡視下腱板修復術後1年の患者満足度に影響する因子の検討
原田 伸哉石谷 栄一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】

鏡視下腱板修復術(以下ARCR)は良好な臨床成績が報告されており,近年では客観的尺度のみではなく主観的尺度を用いた報告が散見されるようになってきた。その中でも患者の不安感,不満感がない,いわゆる患者満足度が特に重要であり,これが医療の質を反映するものと考えられる。今回の目的は術後1年の後療法終了時における患者満足度を調査し,疼痛,可動域,筋力との関連性を明らかにすることである。

【方法】

対象は当院にてARCR後に後療法を施行し,術後1年まで経過観察可能かつ利き手が患側の42例。男性22例,女性20例。平均年齢は63.8歳。この対象を中断裂23例,大広範囲断裂19例に分けた。満足度には腱板障害QOL尺度である日本語版WESTERN ONTARIO ROTATOR CUFF INDEX(WORC)のEMOTIONカテゴリーの点数を使用した。VAS100mmの自己記入方式で,不安感や不満感が低値であるほど満足度が高いと定義した。運動療法終了時の疼痛(運動時痛,夜間痛のVAS),可動域(座位自動挙上,下垂外旋角度,結帯は棘突起到達位置を点数化),筋力(90°外転,下垂外旋の筋力体重比)を調査し,EMOTIONカテゴリー点数との相関関係をサイズ毎に分けて検討した。統計処理はspearmanの順位相関係数を用いて有意水準は5%未満とした。

【結果】

EMOTIONカテゴリー点数との相関関係は,中断裂サイズでは運動時痛r=0.70,夜間痛r=0.64で有意な正の相関を認めた。可動域と筋力は有意な相関は認めなかった。大広範囲断裂サイズの疼痛は運動時痛のみr=0.57で有意な正の相関を認めた。可動域は挙上r=-0.48,外旋r=-0.60,結帯r=-0.68で有意な負の相関を認めた。筋力は外旋筋力のみr=-0.68で有意な負の相関を認めた。

【結論】

今回の調査で,断裂サイズによって満足度に影響する因子が違うという知見を得た。中断裂サイズは疼痛が満足度に影響し,疼痛が少ないほど満足度が高い。可動域,筋力が相関しない理由として断裂サイズが小さいため,機能低下が軽度で術後の改善が得られやすかったと考えられた。大広範囲断裂サイズは疼痛,可動域,筋力が満足度に影響し,運動時痛が少ないこと,機能面では外旋と結帯可動域が特に良好,下垂外旋筋力が強いほど満足度が高いことが明らかとなった。これらの因子を念頭に入れて後療法を行うことで,患者満足度が向上する可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top