理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-14-2
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口述演題
Schroth法に基づく運動療法を施行した特発性側弯症の2症例
清家 慎美崎 定也
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抄録

【はじめに,目的】

近年,思春期特発性側弯症(AIS)に対する保存的治療であるSchroth法が広がりつつある。

Schroth法は身体を肩,胸,腰,骨盤のブロックに分け,それぞれの位置関係を三次元的に評価し,自動運動,呼吸運動によって修正を促す治療法である。

本邦においてSchroth法に基づく運動療法の効果を検討した報告は見当たらない。

「症例紹介」

特発性側弯症と診断されSchroth法に基づく運動療法を施行した2症例を紹介する。症例1は13歳,女性であり長時間の座位姿勢で右肩甲骨内側部の疼痛を訴えていた。Cobb角は胸椎27.5度,腰椎25度であり胸椎をメジャーカーブとした脊柱弯曲異常を呈していた。Adams前屈テストによる傾斜角(scoliometer)は胸椎(Th8)10度,腰椎(L2)5度であった。Risser signは4であった。Shroth法による分類はTri Lle(胸椎右凸,腰椎左凸)タイプに該当した。

症例2は10歳の男性であり,初診時腰部に疼痛を訴えていた。Cobb角は腰椎10度であり,腰椎をメジャーカーブとした彎曲異常を呈していたが傾斜角は0度であった。Risser signは0であった。Shroth法による分類はLle(腰椎左凸)タイプに該当した。

【方法】

Schroth法に基づく運動療法を施行した。症例1は腰椎の代償動作を抑えながら右肋骨隆起を前方回旋および胸椎右凸を側屈することに焦点を当てた。左側背部の皮膚,広背筋,肋間筋のストレッチング,Tri Lleタイプに適用される側臥位,座位でのエクササイズを実施した。介入期間は最初の3週間は週2回(1回40分)その後は週1回40分ずつ計24回介入した。

症例2は腰椎左凸を側屈させることに焦点を当てた。右腰方形筋のストレッチング,腰部の軟部組織mobilization,右骨盤下制,Lleタイプに適用される側臥位,座位でのエクササイズを実施した。介入期間は最初の1ヶ月は週1回(1回40分)その後は2週に1回40分ずつ実施し,計9回介入した。

2症例共に自宅でもエクササイズを継続させた。

【結果】

症例1ではCobb角は胸椎20度,腰椎17度となり,Adams前屈テストの傾斜角は胸椎5度,腰椎1度,と胸腰椎共に改善がみられた。長時間の座位姿勢で右肩甲骨内側部の疼痛は改善された。

症例2も同様にCobb角は4度まで改善された。腰部の疼痛は改善された。

【結論】

Schroth法にもとづく運動療法により,2症例共にCobb角の減少と疼痛の改善,症例1では傾斜角が減少し,改善効果が認められた。Cobb角,scoliometerの測定誤差は,それぞれ5度,3度と言われており,今回の介入は有効であったと考える。今後,介入を継続するとともに更に対象者を増やし,Schroth法の効果を検討したい。

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