理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-18-3
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口述演題
回復期における大腿骨近位部骨折術後患者の筋力と栄養状態の関係
血液データを用いて
尾山 直樹中島 由美大西 徹也
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抄録

【はじめに,目的】

近年,リハビリテーション(以下リハ)栄養という言葉が使用されるようになりリハを進める上で栄養管理の重要性や関心度が高くなっている。臨床の中では大腿骨近位部骨折を受傷し低栄養を合併することで積極的にリハを行えない症例も散見される。そこで今回,大腿骨近位部骨折術後患者の栄養状態を示す血液データの中でも何が筋力と関係し低栄養の有無で筋力に差があるのか調査を実施した。

【方法】

平成24年10月~平成27年12月までに当院回復期リハ病棟を退院した大腿骨近位部骨折術後患者のうち認知症や運動麻痺により筋力測定ができない患者,診療録から目的とする血液データが抽出できなかった患者,腎,肝機能低下を有する患者,急変により転院した患者を除く47例(年齢85.6:69-97歳,男性12例,女性35例)を対象とした。筋力は個人の体格差をなくすため大腿四頭筋筋力を体重で除した体重支持指数(以下WBI)を用いた。大腿四頭筋筋力測定はハンドヘルドダイナモメーター,酒井医療(株)製mobieを使用し,回復期入退院時の健側,患側の測定を行いそれぞれ2回のうち最高値を採用している。それにより算出したWBIと回復期入院時の血清アルブミン値(以下Alb),半減期を考慮した入院2~4週目Alb,コリンエステラーゼ,総コレステロール,C反応性タンパクの相関を求め,相関係数の高いものに関して2群間の比較検定を行った。統計ソフトはR commanderを用い2標本t検定を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

相関係数が0.5以上の項目は入院時患側WBIと入院2~4週目Alb(r=0.57),退院時健側WBIと入院2~4週目Alb(r=0.53),退院時患側WBIと入院2~4週目Alb(r=0.61)であり,特に入院2~4週目Albが退院時WBIと関係することが示された。また,先行研究を参考に入院2~4週目Albが3.5mg/dl未満を低栄養群,3.5mg/dl以上を非低栄養群とし2群間の退院時WBIを比較した。その結果,低栄養群の退院時健側WBI0.34±0.09,非低栄養群の退院時健側WBI0.55±0.21(p<0.05),95%CI(0.1~0.31),低栄養群の退院時患側WBI0.25±0.08,非低栄養群の退院時患側WBI0.41±0.15,(p<0.05),95%CI(0.09~0.24)となり非低栄養群の方が低栄養群に比べ退院時のWBIが有意に高くなった。

【結論】

回復期リハ病棟において大腿骨近位部骨折術後患者の血液データの中でもAlb,特に入院2~4週目Albが退院時WBIと関係しており,非低栄養群は低栄養群に比べ退院時のWBIが健側,患側ともに有意に高かった。Albは半減期が約21日と長く,現在の栄養状態が血液データに反映されるのに時間がかかる事を考慮しなければならない。またCRPの上昇や腎,肝機能の低下でAlbは低下するためそれを踏まえて評価することが重要であると考えられる。また,栄養補助食品などを含め食事摂取に視点を向ける事,回復期へ入院した時点で,さらには急性期の段階で栄養状態を管理する事が必要とされる。

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© 2017 日本理学療法士協会
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