理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-03-2
会議情報

ポスター
大腿骨近位部骨折症例に対する術後早期の電気刺激併用筋力強化法の効果
藤森 由貴唄 大輔亀口 祐貴山田 祐嘉徳田 光紀
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

大腿骨近位部骨折は高齢者に好発する骨折の一つであり,術後の早期離床が合併症予防や歩行能力獲得に重要であると報告されているが,疼痛や筋力低下により円滑に離床できない症例を多く経験する。先行研究では,大腿骨近位部骨折術後症例を対象に電気刺激併用筋力強化法(Method of Electrical Stimulation for Muscle Strength:MEMS)を実施し,術後早期より筋力の改善に効果的に寄与することが示唆されているが,疼痛や日常生活動作(ADL)などに対する効果を示した報告は少ない。

本研究の目的は,大腿骨近位部骨折症例に対する術後1週間のMEMSの効果を,股関節機能の全体的な評価である日本整形外科学会股関節機能判定基準(股関節JOAスコア)と,早期離床に必要な下肢伸展挙上(SLR),移乗動作獲得に着目して検討することとした。

【方法】

対象は当院で手術を施行した大腿骨近位部骨折36例(人工骨頭置換術14例,骨接合術22例)とした。無作為にMEMS群19名とコントロール群17名に割り付け,通常の理学療法を全症例に施行した。MEMSは電気刺激治療器(ESPURGE,伊藤超短波社製)で患側の大腿四頭筋に対して二相性非対称性パルス波,パルス幅300μs,周波数80pps,強度は運動レベルの耐えうる最大強度,ON:OFF=5:7秒に設定して術後翌日から毎日20分間実施した。評価は股関節JOAスコアを項目ごと(疼痛,可動域,歩行,ADL)に術後1,3,5,7日目に測定し,SLRの獲得,移乗動作自立までに要した日数を記録した。統計解析は各評価項目を測定日ごとに群間比較するため,Mann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

股関節JOAスコアの各項目に関して,疼痛は術後3,5,7日目,可動域は5,7日目,ADLは7日目でコントロール群よりMEMS群が有意に高値を示した。歩行は全測定日で有意差を認めなかった。また,SLRの獲得に要した日数はコントロール群よりMEMS群で有意に低値を示した。移乗動作自立までに要した日数は,両群に有意差を認めなかったが,コントロール群よりMEMS群で低値を示す傾向があった(p<0.06)。

【結論】

大腿骨近位部骨折術後症例に対するMEMSは,術後1週間での疼痛の軽減,可動域やADLの改善に寄与することが示唆された。また,疼痛に関しては術後3日目からMEMS群がコントロール群より改善していたことや,MEMS群の方がSLRや移乗動作を早期に獲得できたことから,MEMSは早期離床を円滑に行うための一手段として有用である可能性が示唆された。今回はMEMSの術後早期の治療効果として,股関節JOAスコアとSLR,移乗動作の獲得のみに着目したが,今後は筋力との関連性も検討していくことが課題である。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top