理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-05-2
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Thera-band強度の違いによる頸長筋筋厚の変化
宮田 信彦岡田 航中川 佳久中岡 伶弥羽崎 完
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抄録

【はじめに,目的】近年,Javanshirらが慢性頸部痛患者の頸長筋(以下LC)が萎縮していると報告して以来,LCに対し様々なトレーニングが行われている。そのトレーニングにThera-bandを用いることが多い。しかし,Thera-bandには様々な強度があるが,LCトレーニングに適した強度は明らかでない。本研究はThera-bandの強度の違いによるLC筋厚の変化を明らかにすることを目的とした。

【方法】対象は頸部に問題のない男子大学生14名(平均年齢19.6±0.8歳)であった。測定肢位は背もたれのない椅座位とし,頭部は耳孔と肩峰結ぶ線が床面と垂直,フランクフルト平面が床と平行となる様にした。Thera-band(D&M社製)は強度の弱い順に淡,黄,赤,緑,青,黒,銀,金の8種類あり,それぞれ円周90cmの輪を作った。Thera-bandを頭部にかけ,前方および後方へそれぞれ10cm伸長させた時の右側のLC,頸椎椎体,総頸動脈,胸鎖乳突筋(以下SCM)を超音波画像診断装置(日立メディコ社製)にて撮像した。プローブ(10MHz,リニア型)は甲状軟骨より2cm外・下方かつ水平面上で内側に20°傾け,頸部長軸と平行にあてた。得られた画像から画像解析ソフトImage Jを用いLC筋厚,SCM筋厚を測定した。解析には伸長方向と強度を要因とした反復測定二元配置分散分析とBonferroniの多重比較を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】LC筋厚の平均は安静時9.4±1.8 mm,淡,黄,赤,緑,青,黒,銀,金の順に前方への伸長時10.7±1.5mm,10.6±1.6mm,10.4±1.6mm,10.6±1.3mm,10.3±0.8mm,10.5±1.1mm,10.6±1.4mm,10.6±1.7mmとなり,後方への伸長時10.2±1.1mm,10.0±1.2 mm,10.2±1.4mm,10.6±1.2mm,10.0±1.2mm,10.5±1.3mm,10.0±1.6mm,10.1±1.8mmとなった。SCM筋厚の平均は安静時10.9±4.0mm,LC筋厚と同様の順に前方への伸長時12.3±4.3mm,12.4±3.9mm,12.4±3.0mm,12.2±3.3mm,12.0±3.6mm,11.6±3.8mm,13.3±4.2mm,12.8±3.9mmとなり,後方への伸長時11.7±2.4mm,11.8±3.1mm,12.2±2.6mm,13.4±2.6mm,14.0±3.6mm,14.3±3.3mm,15.3±2.9mm,16.0±3.6mmとなった。分散分析の結果,LCでは伸長方向および強度の主効果が有意にみられた。多重比較の結果,安静に比べすべての強度で有意に筋厚が増加した。SCMにおいても伸長方向および強度の主効果が有意にみられた。多重比較の結果,安静に比べ緑,青,黒,銀,金で有意に筋厚が増加し,淡に比べ青,黒,銀,金で有意に筋厚が増加し,黄に比べ黒,銀,金で有意に筋厚が増加し,赤に比べ銀,金で有意に筋厚が増加し,緑に比べ金で有意に筋厚が増加した。

【結論】LCは安静と比べThera-bandのいずれの強度でも有意に筋厚が増加する一方で,強度間での差はなかった。したがってThera-bandを用いたLCトレーニングの強度選択はどの強度を用いても同様の効果が期待できる。しかし,SCMでは強度を高めるにつれ有意に筋厚が増加したため,より強い強度を用いる際にはSCMが代償すると考える。

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© 2017 日本理学療法士協会
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