理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-06-1
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腰部脊柱管狭窄症患者の腰部および下肢症状がサルコペニアに及ぼす影響
竹内 雄一星野 雅俊辻尾 唯雄久野 剛史北川 明宏木村 祐介熊田 直也奥田 早紀西谷 輝関 昌彦
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抄録

【目的】腰部脊柱管狭窄症(LSS)は腰痛,下肢疼痛およびしびれにより活動量を低下させる。また,サルコペニアは骨格筋量と筋力,身体機能の低下を通じてQOLの低下を招くとされており,一次性は加齢性,二次性は身体能力性,疾患性,栄養性に分類される。LSS由来の腰痛および下肢症状は不活発な生活スタイルとなり,身体能力性サルコペニアになることが予測される。本研究の目的は,LSSによる腰痛,下肢疼痛およびしびれの程度,罹病期間がサルコペニアにおよぼす影響について調査することである。

【対象・方法】対象は,LSSと診断され当院にて後方除圧術予定患者41例(男性31例:女性10例,73.4±5.4歳)とした。検討項目は,サルコペニア判定基準のため握力,最大歩行速度と筋力測定はTANITA MC-780Aを用い,安静時および歩行時の下肢疼痛,しびれ,腰痛の程度(VAS)と各症状の罹病期間,QOLとしてJOABPEQ(疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行能力障害,社会生活障害,心理的障害)を横断的に評価した。①筋量低下は四肢筋量指数Skeletal muscle index;SMIを用い<7.0kg/m2(男性)と<5.7kg/m2(女性)とし,②筋力低下は握力<26kg(男性)と<18kg(女性),③身体機能低下は歩行速度0.8m/sec以下とした。群分けは,①②③の3つを持つ者を重症サルコペニア群,①かつ②または③を持つ者をサルコペニア群,①のみのものをプレサルコペニア群,②あるいは③を持つ者をダイナペニア群とし,それら以外をNormal群とした。解析内容は,各群間と調査項目の比較検討を行い,有意水準は5%とした。

【結果】Normal群は41.5%(17例,72.2±7.1歳),プレサルコペニア群は14.6%(6例70.5±4.7歳),ダイナペニア群は43.9%(18例,73.8±7.4歳),サルコペニア,重症サルコペニアと判定されたものは認めなかった。各群間の比較検討の結果,安静時下肢疼痛において,ダイナぺニア群とプレサルコペニア群はNormal群に比べ不良な傾向を示した(p=0.08ダイナぺニア群37mm:Normal群22mm,p=0.08プレサルコペニア群45mm:Normal群22mm)。歩行時腰痛と安静時腰痛においてダイナぺニア群はプレサルコぺニア群に比べ不良であった(p=0.03ダイナぺニア群58mm:プレサルコぺニア群28mm,p=0.04ダイナぺニア群36mm:プレサルコぺニア群10mm)。また,JOABPEQ歩行能力においてダイナペニア群はプレサルコペニア群に比べ不良な傾向を示した(p=0.07ダイナぺニア群21:プレサルコペニア群40)。その他の検討項目においては,全て有意差は認めなかった。

【結論】

本研究の結果,LSS患者において下肢疼痛の程度がダイナペニアとプレサルコペニアに影響を及ぼし,腰痛の程度がダイナペニアに影響することが示唆された。また,ダイナぺニアを有する患者は歩行能力が低下していた。

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© 2017 日本理学療法士協会
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