理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-26-4
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大腿骨近位部骨折患者における急性期病院退院時の日常生活動作能力予測に適した栄養スクリーニングの検討
井上 達朗三栖 翔吾田中 利明筧 哲也三坂 恵垣内 優芳渡 彩夏小野 玲
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抄録

【はじめに,目的】

本邦では高齢化に伴い大腿骨近位部骨折患者は増加傾向にある。大腿骨近位部骨折患者において,急性期病院退院時Activity of Daily Living(以下ADL)が退院後1年の死亡率を予測するとの報告があり,急性期病院でのADL改善は重要である。また,近年,栄養状態が術後ADLを予測すると報告され,早期の栄養スクリー二ングと適切な介入が推奨されている。欧州臨床栄養・代謝学会は栄養スクリーニング方法としてMini Nutritional Assessment-Short Form(以下MNA-SF),Malnutrition Universal Screening Tool(以下MUST),Nutritional Risk Screening-2002(以下NRS-2002)を推奨しているが,アルブミン値と体重を計算式に用いたGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRI)等の方法もあり,どの方法がADLの予測に適しているかを比較検討した報告は未だみられない。本研究の目的は,上記4つの栄養スクリーニング方法から急性期病院退院時ADLの予測に適した方法を比較検討する事とした。

【方法】

対象は転倒により受傷し急性期病院に入院した大腿骨近位部骨折患者とした。除外基準は保存療法選択,受傷前歩行不可,術後荷重制限例とした。全対象者に対して入院時のMNA-SF,MUST,NRS-2002,GNRIを評価し,それぞれの方法において栄養良好群・リスク群・低栄養群の3群に対象者を分類した。退院時ADLはFunctional Independence Measure(以下FIM)運動項目を用いて評価した。統計解析は退院時FIM運動項目を目的変数,各スクリーニング方法によるグループを説明変数とした重回帰分析を,それぞれの方法ごとに実施した(MNA-SF model,MUST model,NRS-2002 model,GNRI modelの4つのモデルを作成した)。各モデルにおいて,交絡変数として先行研究より年齢,性別,骨折から手術までの日数,受傷前歩行能力,握力,下腿周径,併存疾患を強制投入した。

【結果】

解析対象者は205名で平均年齢は83.5±7.0歳,在院日数中央値は23日であった。MNA-SF,MUST,NRS-2002,GNRIの順に栄養良好群27.3%,47.3%,43.4%,21.5%,リスク群50.2%,20.5%,33.7%,36.1%,低栄養群22.5%,32.2%,22.9%,42.4%であった。重回帰分析の結果,MNA-SFのみが退院時FIM運動項目と有意に関連していた(良好群 vs リスク群 β=-0.09,P<0.05,良好群 vs 低栄養群 β=-0.39,P<0.05,R2=0.53)。

【結論】

本研究において,術後大腿骨近位部骨折患者の急性期病院退院時ADLの予測には,MNA-SFが適している事が示唆された。BMIや体重減少,アルブミン値という身体特性のみを用いて評価する他のスクリーニング方法と比較し,MNA-SFは認知機能や歩行能力が評価内容として含まれており,より包括的なスクリーニング方法であることから,退院時ADLの予測に有用であったと考える。

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© 2017 日本理学療法士協会
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