理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-08-4
会議情報

口述演題
筋力トレーニング条件の違いが運動直後に生じる筋腫脹に及ぼす影響
廣野 哲也池添 冬芽中村 雅俊谷口 匡史田中 浩基荒田 大輝市橋 則明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

筋力トレーニング直後に生じる一過性の筋の腫脹は,代謝物蓄積や組織間液の増加により生じ,筋肥大を誘導する要因と考えられている。しかし筋肥大を起こすために必要な筋腫脹の程度について検討した報告は見当たらない。長期介入研究によって実際に筋肥大効果が得られたトレーニング条件と筋肥大効果が得られなかったトレーニング条件を用いて,トレーニング直後の筋腫脹を比較し,その程度に違いがあれば,一過性の筋腫脹を観察することが長期介入時の筋肥大効果を予測する目安になるのではないかと考えた。そこで本研究の目的は,トレーニング条件の違いがトレーニング直後に生じる筋腫脹の大きさと持続時間に及ぼす影響について明らかにすることによって,筋肥大に必要な筋腫脹の程度についての目安を検討することである。

【方法】

対象は健常若年男性11名(年齢23±0.9歳)とした。多用途筋機能評価運動装置(BIODEX社製)を用いて,50%1RMの強度で低速度運動(求心相3秒,保持1秒,遠心相3秒)を8回3セット行う条件(50S)と通常速度運動(求心相1秒,遠心相1秒)を3セット行う条件(50N),80%1RMの高強度での通常速度運動を3セット行う条件(80N)と疲労困憊まで行う条件(80F)の4条件での膝伸展筋力トレーニングを3日以上の間隔をあけてランダムに実施した。なお,この4条件のうち,50N条件での長期介入では筋肥大が生じないが,その他の3条件では長期介入によって筋肥大効果が得られることが先行研究によって示されている。筋腫脹の指標として,超音波診断装置を用いて大腿直筋の筋厚を測定した。測定時期は運動前,運動直後,運動5分後,10分後,20分後,30分後(pre,post,5min,10min,20min,30min)とした。統計解析は測定時期とトレーニング条件の2要因における反復測定二元配置分散分析,事後検定として多重比較検定を行った。また,運動前に対する筋厚の増加率を算出し,多重比較検定を用いてトレーニング条件間で筋厚増加率を比較した。

【結果】

二元配置分散分析の結果,時期とトレーニング条件の主効果および交互作用を認めた。多重比較の結果,50N条件における筋厚はpreよりもpost,5min,10minで有意に高値を示し,50Sと80Nではさらに20minまで,80Fでは30minまで有意な筋厚の増加が認められた。筋厚増加率の多重比較の結果,post,5minにおいて50Nは他3条件よりも有意に低値を示し(post;50N=8.3±3.6%,50S=14.7±4.7%,80N=15.7±4.9%,80F=20.5±6.6%。5min;50N=6.2±3.5%,50S=12.1±5.2%,80N=12.3±4.2%,80F=18.2±6.8%),また10min以降は80Fのみが50Nよりも有意に高値を示した。

【結論】

長期介入時に筋肥大が生じないトレーニングでも一過性の筋の腫脹は生じるが,長期介入時に筋肥大が生じたトレーニングでは,運動直後の筋厚の増加が20分以上持続し,またその増加率は運動直後において15%程度,運動5分後で12%程度であった。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top